国連会議に先立ち、チメロサール ワクチン討論は続く。

第11回国際水銀汚染グローバル会議プレスリリース(2013年7月25日版)より

【原文】
http://www.mercury2013.com/news/Thiomersal-vaccines-debate-continues-ahead-of-UN-meeting/12/

Nayanah Siva報告によれば、専門家は6月末に開催予定の第4回会議で、水銀に関する国際条約について話し合うことになっているが、合意に至れば、国際的に予防接種計画の妨げになる可能性がある。

1997年、水銀ベースの化学薬品、チメロサールを含むワクチンと自閉症との関連性をめぐる懸念のさなか、FDA(米国食品医薬品局)は水銀を含有する全食品・薬品の危険性を審査するよう召喚された。1999年、科学的なエビデンスは無いにもかかわらず、米国疾病管理予防センター(CDC)は製造業者に、「チメロサール含有ワクチンは可及的速やかに排除されるべきであると」いう勧告を出した。CDCは、「子供たちが受けたであろう暴露レベルで引き起こされる、いかなる害に関してもデータやエビデンスは存在しない」と述べたが、「子供たちが人生の最初の6ヶ月超の間に被爆する可能性のある水銀の累積レベルがメチル水銀に関する連邦ガイドラインの水準を超える可能性がある」ことは重々認識した。

十年以上たって、いくつかの独自調査や協議でもチメロサール入りワクチンと自閉症の関連性を何ら見いだせなかったことにかかわらず、その討論は今だに続いている。4月に、WHOはこの問題に関する協議を再度開催し、現在、国連環境計画(UNEP)が水銀に関して国際的に法的効力のある合意の実現に取り組んでいる。6月末に再開する国連環境計画(UNEP)の交渉では、チメロサール含有ワクチンの安全性評価も行われ、2013年までに何らかの決定を下すことを目指している。

チメロサールは、1930年代から多用量バイアルワクチンに保存剤として少量投与で使用されてきた。しかし、自閉症とチメロサールの関連性について国民の関心が高まって以来、またCDCの1999年の勧告以来、米国企業はこの水銀化合物を製造ワクチンから取り除き、何年にもわたって単回投与バイアルを製造し続けてきた。今のところ、こうしたワクチン製造における変化は米国でのみ報告されているが、もし国連環境計画(UNEP)によってチメロサールの世界的全面禁止が勧告されれば、発展途上国に深い悪影響が起こるだろうという懸念が高まっている。

「いかなる理由にせよ、ワクチンにチメロサールを使うことをやめるなら、何らかの既製代替品が必要になる。しかし、現行、既製代替品はなく、唯一の当座の代替品は単回投与バイアルである。」と“予防接種(免疫付与)に対する国民の信頼をサポートするプロジェクト”に取り組んでいる、英国のLSHTM(ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院)のHeidi Lason氏は述べた。しかし、発展途上国世界で単回投与バイアルを使用するという物流管理は実行可能ではない。

発展途上世界で使われている多用量バイアルは、10回投与分までのワクチンを入れることができ、発展途上国での保管、輸送が容易くなる。「大抵のワクチンは冷凍保存する必要があり、多用量バイアルは、保管および輸送中のコールドチェーン(低温流通系)において投与量あたりのスペースが少なくて済む。また、投与量あたりで言えば、多用量バイアルのワクチンは製造業者から購入する際にかなり安価である。もしチメロサールが禁止されれば...多くの予防接種計画でカバーできる児童数が現行の数に達するのは不可能だろう。」とMedecins Sans Frontieresは声明の中で述べた。

チメロサール含有ワクチンは必須医薬品であり、120カ国以上の国で使用され、毎年、世界出生コホート(同時出生集団)の少なくとも64%に免疫を与えている。WHOの推定では、チメロサール含有ワクチンは、毎年、少なくとも140万人の児童を死から回避させており、ジフテリア、破傷風、B型肝炎のような致死性疾患に対して使われているのである。

チメロサールが禁止されるかもしれないという推測は発展途上世界のみに影響を与えているのではない。オーストラリア政府のワクチン予防接種主要諮問委員会議長、Terry Nolanが述べているように、チメロサールは、迅速生産(単回使用の単位用量の提案説明では、生産により時間がかかり、緊急に必要になった際に注射器の資源制約問題や入手可能性の問題がある)と効率的な配送(集団予防接種期間には多用量バイアルを使う方がより迅速で効率が良い)の両面における必要性から“流行性インフルエンザ”用のワクチンにも使われているのである。

Larson氏の主な懸念事項の一つはワクチンに対する国民の信頼である。「米国では[チメロサールに関する]心配がある一方、ここ英国ではMMRワクチンに対する不安がある。また、人々がワクチンをめぐる信頼問題と格闘するにつれて、それらの問題が関係のないものであっても、彼らの心の中ではすべての懸念事項が一緒くたになってしまい、不安感を強めてしまう...。」

2004年、米国医学研究所は、予防接種の安全性に関する第8回目となった最終評価を行い、MMRあるいはチメロサール含有ワクチンと自閉症のあいだには何の関連もないという決定的結論を下した。Larson氏は、科学的エビデンスにはいかなる副作用もチメロサールとの関連性を示すものはないことから、国連環境計画(UNEP)はチメロサールを禁止することはないだろうという希望を持っている。「私は、UNEPがWHOやこの件について名乗り出ている他の強力な発言者たちの忠告に従うだろうと思っているし、それなりの自信もある。」