日本ホメオパシー医学協会(略称JPHMA)は、2010年7月31日付けで掲載された記事(http://www.asahi.com/health/feature/homeopathy.html 掲載終了)は、先入観や偏見なく、事実を公正・公平に報道するという倫理を逸脱した記事であったと判断します。
またこの記事を書いた朝日新聞東京本社 科学医療グループ 長野剛記者の取材方法ならびに報道姿勢については、取材目的を隠蔽し、先入観と長野剛記者の個人的な片寄った信条により、公正でない取材活動と、片寄った情報の報道になっていると判断します。
長野剛記者が書いた記事内容(朝日新聞社内の長野剛記者のブログを含む)と、実際の長野剛記者の取材の過程の両方から、JPHMAが問題と考える点を以下に取り上げて説明していきます。
2010年6月14日、朝日新聞東京本社 科学医療グループ 長野剛記者
(1)「朝日新聞土曜版Be reportでホメオパシー特集の企画があり、最近政府の統合医療プロジェクトの関係など日本でも話題になってきており、今トレンドのホメオパシーについて、自分自身はよく知らないので詳しく教えてほしい。日本の主要なホメオパシーの団体であるJPHMAに是非とも取材をお願いしたい。そして可能ならば、由井会長からホメオパシーについてお話をうかがいたい」
2010年6月14日、朝日新聞東京本社 科学医療グループ 長野剛記者からJPHMAに対して電話にて上記の通り取材依頼がありました。JPHMAとしては、今トレンドになっているホメオパシーを特集で紹介するための取材ということでしたので、これを受けることにし、長野剛記者の希望通り、JPHMAの会長である由井が対応しました。
こうして、朝日新聞東京本社 科学医療グループ 長野記者による取材は、6月17日に、世田谷区池尻のカレッジ・オブ・ホリスティック・ホメオパシー(CHhom)1階教室にて1時間30分以上にわたって行われました。ホメオパシーの原理から、教育体制、歴史、科学的根拠、国際的な状況など幅広い内容についての長野剛記者の質問に対し、由井会長はハーネマンの教えに基づき丁寧に誠意をもって回答を行いました。
なお、長野剛記者の同意を得て録音していた上記取材のやりとりに関しては、全文をホームページに掲載します。7月31日の記事以降にも長野剛記者が新たにホメオパシーの記事を書くことがわかり、またこのときに取材した内容を流用しようとしていることがわかりましたが、そのときに長野剛記者が由井会長の発言として現在も同じ考えであるかとJPHMAに確認してきた内容が、話の流れの中で解釈されるべき発言を部分的にピックアップしていたことから、今回の取材での由井会長の発言を恣意的に加工し使われる可能性がきわめて高いと判断したからです。この危険性を察知し、長野剛記者には事前に注意を促しています。このやりとりに関しても順次掲載していきます。
7月31日 朝日新聞土曜版 Be report(長野剛記者)
(2)「問われる真偽 ホメオパシー療法」
話をもとに戻しますが、「問われる真偽 ホメオパシー療法」という掲載された記事の大見出しからわかるように、実際は、トレンドとしてのホメオパシーを紹介することが取材の目的としてあったのではなく、長野剛記者のホメオパシーに対する先入観による片寄った理解と独善的な信条に基づく、ホメオパシー叩きを行うことが主な目的だったと考えられます。
上記は、朝日新聞本社 科学医療グループのブログで長野剛記者自身が語っている以下の内容からも明らかです。
このように、取材目的を隠蔽しJPHMAに近づき取材を行ったものと考えます。結果として公平でない内容が掲載されました。
8月3日 朝日新聞 医療サイト「アピタル」(長野剛記者)
(3)「私がホメオパシーの記事を書こうと思ったのはかなり昔です。近所のお母さんで、お子さんの食物アレルギーをホメオパシーで治そうとしていた方がいたのです。「アナフィラキシーが起こってもホメオパシーで治すの? 死ぬんじゃないか?」と思いました。
具体的な「被害」の例がつかめず、なかなか書けなかったのですが、「be」の流行紹介のコーナー(be report)で書くという手を思いつき、6月中旬に着手した次第です。ただ、もっと具体的な「被害例」を集め、ホメオパシー治療の実際について、もっと世間に発信したいと思っています。」
https://aspara.asahi.com/blog/kochiraapital/entry/kNKQFuNbTK 掲載終了
上記のコメントからわかるように、朝日新聞 科学医療グループの長野剛記者はホメオパシーに対する偏見と予断をもって、今回の記事を作成するための取材をすすめ、必然的にホメオパシーの効果に否定的な見解をもつ人物への取材とホメオパシーの効果に否定的な情報だけを集め記事にしたことがわかります。こうして本来の公正な視点から報道するという記者が行うべき立場を逸脱した報道姿勢によって、ホメオパシーの歪んだ報道へと繋がってしまったと考えます。
なお、アナフィラキシーショックを起こしたとき、JPHMAではもちろん、救急車を呼び然るべき医療機関に行くことをすすめます。しかし、同時に救急車を待っている間、レメディーをとることをすすめます。なぜなら、ホメオパシーのレメディーには、そのような症状に合うレメディーがあり、実際にそのような状況において多くの命がホメオパシーのレメディーで救われたという事実があるからです。最近山でスズメバチに刺されショック死した人がいましたが、その人もしくは、一緒にいた人が基本的なレメディーをもっており(たとえばミツバチから作られたApis[エイピス]というレメディーが基本的なレメディーとしてあります。またスズメバチから作られたレメディーもあります)、救急車を待っている間にそのレメディーをとることができたら、助かっていた可能性があります。
治癒原理を科学的に説明できないという理由だけでホメオパシーを否定するならば、現代医療を受ける機会を逸しさせる責任があるとしたら、ホメオパシー療法を受ける機会を逸しさせた責任も同様にあると考えます。なぜならホメオパシーの有効性を示す文献は過去200年の歴史のなかでやまほど存在し、ホメオパシーの有効性については疑う余地がないからです。
7月31日 朝日新聞土曜版 Be report(長野剛記者)
(4)「気が遠くなる程薄めた「毒」をのむことで病気を治す」
「「症状を起こす毒」を、よく振りながら水などで薄め、砂糖粒に染み込ませたものだ」
「薄める毒は3千種、毒草のトリカブトや、昆虫、鉱石など3千種類」
「薄める時によく振ることで、毒のパターンが水に記憶される」と協会会長の由井寅子さんは解説する。」
長野剛記者が取材時および電話での追加取材時に何度も「毒」という言葉を使うので、ホメオパシーのレメディーはハーブ、草木、昆虫、ミネラル、鉱物など、多種多様なものから希釈振盪してつくられるので、「ホメオパシーの原物質=毒」ではないと説明し、JPHMA理事が長野剛記者に事実に即した正確な表現をお願いしました。しかし、今回の記事を読むとわかるようにJPHMAが指摘した点が記事に反映されることはなく、すなわち正確に記載されることはなく、「毒」という言葉を多用し、「ホメオパシー=毒」というマイナスイメージで報道されることになりました。上記の経緯があってこのように報道されたことから、長野剛記者は意図的にホメオパシーは危険であるというマイナスイメージを読者に与えようとしていたと考えます。
さて、取材後に朝日新聞東京本社 科学医療グループ 長野剛記者から、下記内容で追加の質問メールがJPHMAにありました。
7月10日 メール内容(長野剛記者)
(5)朝日新聞の長野です。
先日は由井寅子理事長の取材を設定して頂き、ありがとうございました。取材の時もお伝えしたとおり、ホメオパシーを代替医療研究からの観点でもご紹介すべく、取材を続けております。その取材の中で、治療効果のエビデンスについて2点、由井さんに改めてご質問させて頂きたい点が出て参りましたので、メールを差し上げる次第です。できましたら、由井さんのご回答を文書でいただけませんでしょうか。
ご質問は以下の2点です。
1:2005年、スイスのベルン大のシャン医師らのグループは英医学誌ランセットに論文を発表し、「ホメオパシーの医学的効果はプラセボ効果に過ぎない」との結論を述べました。ホメオパシーの医学的効果を調べた110件の研究例(論文105本分)をメタアナリシスという手法で検証した結果です。比較のために同じ手法で西洋医学の110件の研究例を分析した結果では、西洋医学の薬の効果は「あった」としています。
ホメオパシーに治療上の効果がないと断言する研究成果について、どのようなご見解をお持ちですか。
2:今年2月、英国議会下院の科学技術委員会は、上記の論文など多数のホメオパシー研究を検討した結果、「ホメオパシーにはプラセボ効果以上の治療上の効果はない」と結論し、政府に対して保健医療でのホメオパシーへの公費支出の停止などを勧告しました。由井さんは私がインタビューさせて頂いたとき、「ホメオパシーは英国議会も認めている」と仰っていましたが、それはいつ、どの時点での見解でしょうか。また、この英国下院の政府への勧告について、どのようなご見解をお持ちでしょうか。
なお、誠に勝手ながら、16日金曜日までにメールでご返答頂けると幸いです。お電話でお伝えしたとおりで、回答が不可能なものについては、ご回答頂かなくても結構です。ただし、回答が不可能な旨も、ご連絡頂ければ幸いです。
大変お手数をおかけし誠に恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
上記の長野剛記者からの質問に対し、JPHMAからは、16日金曜日までという日付指定があったので、それまでに間に合わせるべく努力して資料を集め、上記に関する関連資料を合せ、以下に示す42ページに及ぶ内容を送付しました。
このときは長野剛記者の取材目的がホメオパシー叩きにあるということなど夢にも思わず、この素晴らしいホメオパシー療法を日本国民に知らしめてくれるという有り難い気持ちでいっぱいで、限られた時間の中で日本いるJPHMA理事、英国にいるJPHMA理事が力を合わせ、可能な限り誠実に対応させていただきました。
- ランセットの記事の信憑性に対する各界からの反論
- そして、様々なホメオパシーに関するエビデンス
- 英国国会が最も安全な代替医療であると認めた英国貴族院の公開ホームページアドレス
- 英国下院の勧告は決定でなく、英国会のコンセンサスがとれたものでないこと
- 欧州各国でのホメオパシーの法的地位、保険適用等の状況など
- ホメオパシー推進での医療推進
しかしながら、当協会から提出された42ページの資料は長野剛記者には都合の悪いものだったのか、ホメオパシーが英国貴族院で最も安全な代替医療と認めている件や、英国国会科学技術委員会の勧告は片寄ったもので国会内でも問題となっている件、欧州各国で様々なレベルで政府にホメオパシーが認められている件、そして、200以上に及ぶ、様々なテーマとレベルでのホメオパシーの有効性を示す論文リストなどを含め提出しましたが、これらに関しては精査されずに無視されたようです。
本来このような調査は長野剛記者自身が行うべきことだと思いますが、大変手間がかかると思ったのでしょうか、当協会に全てを調べさせたということも言えます。
またランセットの論文に疑問を投げかけた複数のコメントについても無視されたようです。
ランセットの論文に関しては以下に説明します。
7月31日 朝日新聞(Be report 長野剛記者)
(6)「05年にスイスのベルン大学のチームが110件の研究から極めて良質な8件を選び出し、ホメオパシーの効果の有無を総合判定する論文を英医学誌ランセットに報告した。チームは、良質な論文群を包括的に分析した結果、「ホメオパシーはプラセボ(偽薬)効果に過ぎない」と結論づけた。
偽薬効果とは、薬効が全くない物質でも、本人が「効く」と信じて飲めば効くことがあるという効果のことだ。つまりベルン大の結論は「ホメオパシー自体には、治療効果は全くない」ということを意味している」
科学雑誌「ニューサイエンティスト」誌のコンサルタント、マイケル・ブルックス氏は、医学誌「ランセット」が、「ホメオパシーはプラシーボ以上のものではない」と結論づけたシャン氏の2005年8月27日号の論文は、欠陥論文であり、「ランセット」の学術誌としての価値を貶(おとし)めたとして、以下の本の中で言及しています。
「13 THINGS THAT DON’T MAKE SENSE THE MOST INTRIGUING SCIENTIFIC MYSTERIES OF OUR TIME(邦訳題 『まだ科学で解けない13の謎』)」(楡井浩一訳 草思社)
この本の中で、ブルックス氏は、ベルン大学のシャン氏とその研究チームがランセットで発表した上記論文については、ホメオパシー共鳴者でないクラウス・リンデとウェイン・ジョナスなど、複数の科学者が欠陥論文であると指摘しています。「ランセット」ともあろうものが、この手の「不備のある」調査結果を掲載したことに愕然としていたことに触れています。第13章(304ページ)以降もこの件について触れられています。
同書は、まだ科学では解明されていない13のテーマを取り上げて論じていますが、12番目は、プラシーボ効果(ニセ薬でも効くなら、本物の薬はどう評価すべきか?)、13番目に、ホメオパシー・同種療法(明らかに不合理なのになぜ世界じゅうで普及しているのか?)を取り上げ、ホメオパシーについて、賛否両論の立場から論じています。そして、そこには非常に示唆に富む内容が含まれています。
長野剛記者には、事前にランセットの論文に疑問を投げかけた複数のコメントについてお知らせしたにもかかわらず記事に反映されることはなく無視されました。
7月31日 朝日新聞(Be report 長野剛記者)
(7)「偽薬効果とは、薬効が全くない物質でも、本人が「効く」と信じて飲めば効くことがあるという効果のことだ。つまりベルン大の結論は「ホメオパシー自体には、治療効果は全くない」ということを意味している」
朝日新聞社の一連の記事において気になることは、ホメオパシーの効果を否定するような論調になっていることです。ホメオパシーの有効性の科学的メカニズムについては確かに現段階においては解明されていないかもしれませんが、ホメオパシー療法の有効性については疑う余地のないものであり、それは赤ん坊、動物においてもその有効性が顕著に見られるという事実からもプラシーボ以上のものであることは疑う余地がなく、「本人が「効く」と信じて飲めば効く」というレベルのものではない、膨大な治癒実績があります。
JPHMAが長野剛記者に提示したホメオパシーの有効性を示す文献は、世界中にある文献のごく一部に過ぎず、きちんとホメオパシーの調査をする意志があるならば、いくらでも見つけることができるものです。公正な報道とは、ホメオパシーの有効性を示す文献をきちんと調査した上で行うべきであると考えます。
今後は、ホメオパシーの有効性に関する科学的根拠がないことと、ホメオパシーの有効性がないことは全く別のことですから、事実として、ホメオパシーが有効であるという記事を書いていただきたいと思います。
さて、こちらが長野剛記者からの質問に答え、42ページにわたる資料を提出しました後、英国政府がホメオパシーのNHS適用継続を決定という新事実が判明したことを以下のように7月28日に長野剛記者に伝えました。
7月28日 メール内容(JPHMA)
朝日新聞 科学医療グループ 長野様
お世話になります。英国NHSでのホメオパシーの保険適用について新しい情報が入りました。
英国政府は、国民健康保険におけるホメオパシーへのアクセスを維持する事に決定しました。
本件、ホメオパシー国際評議会(ICH)のトップページに以下の文章が掲載されております
http://www.homeopathy-ich.org/
和訳(JPHMA)
英国議会下院に提出された、科学技術委員会のホメオパシーに関する報告書に対して、英国政府の正式な対応が発表されました。英国政府は、患者が、十分な説明を受けた上で自分の治療法について選択することができ、家庭医が患者に代わって、複数の療法を選択する権利を持つべきであるという姿勢で回答しています。
英国議会下院科学技術委員会は、3月、ひどく落ち度のある取調べの末、例えば、ロイヤル・ロンドン・ホメオパシック・ホスピタル(王立ロンドンホメオパシー病院)などの外来クリニックで適用されている国民健康保険(NHS)は、今後はホメオパシーには適用すべきではないと推奨しました。
科学技術委員会の報告書では、ホメオパシーの有効性に関して証拠がないため、国民健康保険の適用をすべきでないというものでした。「国会議員によるホメオパシーの適用停止推奨」というような大見出しの下でPRされたその報告は、実は、これがたった一人のホメオパシーに懐疑的な国会議員に煽られて始められ、10名以下の国会議員によって実行に移され、最終的にはたったの3名(そのうちの2人は調査に参加したかどうかさえ分からない)の議員によって承認される、といった慌ただしい調査の結果でした。その懐疑的な国会議員は、5月の英国国会選挙で既に議席を失っています。
この報告書に対して、政府の回答は、以下のようなものでした。「患者は、十分な説明を受けた上で自分の治療法を選択することができ、医師は、法律によって定められている規制と方針の枠組みの中で、特定の状況において、その患者に最も適切と思われる治療法を施す事ができるべきである。」
さらに次のように述べています。「ホメオパシーに対する国民健康保険(NHS)適用を引き続き支持する私たちの立場として、ホメオパシーのような補完治療、代替療法を含む、どのような治療法が、患者にとって適切なのかを判断し、その上で提供するのに、最も相応しい立場にいるのは、ホワイトホール(英国政府)よりも、むしろ、各地のNHSと医師たちである、というものである。」
政府の回答文書は、以下のウェブサイトに掲載されています。
http://www.dh.gov.uk/prod_consum_dh/groups/dh_digitalassets/@dh/@en/
@ps/documents/digitalasset/dh_117811.pdf
JPHMA事務局
これに対し、長野剛記者から以下の返信がありました。
7月28日 メール内容(長野剛記者)
(8)「メール、ありがとうございます。大変参考になりました。
でも、英国厚生省の文書も「ホメオパシーに効果がある」ということは示せていませんね。
今後、英国でどのような議論が展開されるのか、大変興味があります。
先日取材させて頂いた要素を盛り込んだ記事はお伝えした通り、31日の弊紙別刷りbeに掲載予定ですが、残念ながら、すでに印刷が始まっており、お伝え頂いた内容は盛り込むことが出来ません。一般紙面と違うため、前もって印刷してしまうのです。
ご承知の通り、貴会認定ホメオパスの助産師さんを相手取った山口の訴訟も始まるなど、国内でもホメオパシーを巡る議論が始まりそうな雰囲気ですし、今後、続報を書く時に是非参考にさせて頂きたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
長野剛 」
こうして、新聞発行日までに、3日もあったにもかかわらず、事実でないことが報道されました。「英国会 ホメオパシーにNO!」という文字の大きく目立つイラストを入れて、また記事のリード中にも、「だが、この療法が公的医療の一角を占める英国は今年、議会委員会がその効果を全面否定、公的医療から外すよう政府に勧告した」と掲載し、英国国会内のホメオパシー懐疑派の一議員(前回の総選挙で議席を失っています)が中心となって行った一委員会の勧告があたかも英国国会全体の決定であるかのように報道となり、英国国会全体が、ホメオパシーを否定したかのような印象を持たせる形で掲載されたことは海外事情の正確な取材不足にも原因があると考えます。
もし、3日前に記者が知ったのであるなら、最新の事実を報道するよう、刷り直したり、訂正文章を本誌や広告を入れたりして正確に報道しようとするのが本来の新聞社の報道姿勢ではないかと思います。このことで、あたかも英国でホメオパシーが公的医療からはずされるような誤解や、英国会が全面否定したような事実と異なるイメージを多くの読者に与えたという事態を招き、はなはだ遺憾です。
加えて、記事掲載前には、朝日新聞長野剛記者からの追加質問に答え、当該の下院勧告に対しては、議員から反対の動議が出されており国会全体の総意でもないことや、英国国会がホメオパシーが最も安全な代替療法と認められた証拠となる資料の提出を求められ、英国貴族院のWebサイトのアドレスに公開されている情報をアドレスつきで送信していますが、それが記事に反映されることはなく、ここにも先入観と予断に基づいた朝日新聞 長野剛記者の報道の姿勢に問題があると考えます。
8月3日 朝日新聞 医療サイト「アピタル」(長野剛記者)
(9)「さて、今回の取材では、ホメオパシー団体からも「効く」とする「学術的」な論文を頂きました。英国のホメオパシー病院で「ホメオパシーを利用した人の7割が健康が良くなった」とするものです。ダブルブラインドの観点からすれば、突っ込みどころ満載でした。」
最初の長野記者の取材時に、たまたま、英国ブリストルのホメオパシー病院の来院者追跡調査のレポートが話題になり、長野剛記者がぜひ詳細を知りたいので送ってほしいということを言われましたので、原文を送りしました。
その時は、長野剛記者からダブルブラインドの調査結果の論文を求められたという事実はありません。あくまでも話の流れの中でたまたま英国ブリストルのホメオパシー病院の来院者追跡調査のレポートが話題になり、その資料を長野剛記者が要求されたのでお送りしたものです。
上述した通り、長野剛記者には、下記リンクにあるように、JPHMAからダブルブラインドテストでホメオパシー有効と判断された複数の論文を含め送付していますがその内容は無視されています。
- ※詳細は、JPHMAホームページリンクで紹介しています。
長野剛記者のブログでは、「ダブルブラインドテストを経て「効く」となれば、ホメオパシーは本物です。記事中に紹介したのは、2005年に発表された英医学誌ランセットの論文。ランセットは医学雑誌の中でも最も権威ある論文誌のひとつです。」と発言しています。このランセットの記事の信憑性に関しては上述した通りです。長野剛記者は、権威あるものは、中身をしっかりと検証せずに正しいとし、ホメオパシーの効果に肯定的な成果を見い出した論文はしっかりと検証せずに否定したものと思われます。
7月31日 朝日新聞(Be report 長野剛記者)
(10)「インターネット上にも「被害」の訴えは多い」
長野剛記者自体がアピタルのブログで、「私がホメオパシーの記事を書こうと思ったのはかなり昔です。」と書いています。そのホメオパシーを書こうと思ったのは、以下の理由によります。
「近所のお母さんで、お子さんの食物アレルギーをホメオパシーで治そうとしていた方がいたのです。「アナフィラキシーが起こってもホメオパシーで治すの? 死ぬんじゃないか?」と思いました。」
つまり、ホメオパシーで治そうとして人が死ぬのではないかと思い、そのような問題が生じないだろうかと被害者が出てくるのを待っていたことがわかります。そしてこのように書いています。
「具体的な「被害」の例がつかめず、なかなか書けなかったのです」
つまり、かなり昔にホメオパシーをたたこうと思って狙っていたのですが、かなり長い間、被害者が出てこず、書くに書けなかったことがわかります。このことからも「インターネット上にも「被害」の訴えは多い」という表現は適切ではないと考えられ、朝日新聞の行動倫理規定に基づく公正な取材にも抵触するものではないかと考えます。
8月3日 朝日新聞 医療サイト「アピタル」(長野剛記者)
(11)「具体的な「被害」の例がつかめず、なかなか書けなかったのですが、「be」の流行紹介のコーナー(be report)で書くという手を思いつき、6月中旬に着手した次第です。ただ、もっと具体的な「被害例」を集め、ホメオパシー治療の実際について、もっと世間に発信したいと思っています。「治る」と信じた結果、かえって通常医療を受ける機会を逸してしまったような方は、いらっしゃいませんか? ぜひ、お話をお伺いしたいと思います。お心当たりのある方はぜひ、アピタル編集部(apital&asahi.com)=&を@に変えてください=までご連絡ください。」
(12)「私としては、「こういう問題が指摘されていますよ」という投げかけをした以上、「実際にこういう例があります」「こんな例もあります」という事例紹介をしていくべきだと思っています。つまり、「被害報告」を紙面でしたいと思います。
おっしゃる通りで、予防注射拒否はありそうですね。周産期に関してはよくご存じの通り、読売新聞がスクープした山口の訴訟の件がすでにありますし。
山口のように訴訟まで発展していれば、それを知ることさえできれば記事として書きやすいです。でも、それ以前の状況ならば、複数例を知る必要があると思っています(←業界の相場感的に)。
ただ、正直言って、私自身に実例を探すつてはありません。ネットも割に探したつもりですが、直接本人にコンタクトできそうな書き込みには出会えていません。ぜひ、良い情報がありましたら、お教え下さい。よろしくお願いいたします。
上記のように長野剛記者は、朝日新聞社のブログの中で被害者の募集をしていますが、このように被害者を募集している点、また募集する理由(記事を書くため)も、新聞記者の公正な報道の姿勢として大いに問題であると考えます。
7月31日 朝日新聞(Be report 長野剛記者)
(13)「好転反応について、ホメオパシー医学協会の由井さんは「症状は有り難い」との持論で説明する。ホメオパシー治療では、病気の症状がかえって激しく出ることがあるが、それは治療で自己治癒力が向上したことの証しの「好転反応」で、有り難いことなのだ、という理論だ。こんな極論を信じた結果、患者は症状が悪化しても「良くなっている」と思いこみ、病院に行くのを拒否する、というのが梅沢さんの指摘だ。」
「最大の問題は、現代医学を否定し、患者を病院から遠ざける点にある」と指摘する。
このような記事の書き方では、読者は2010JPHMAならびにJPHMA由井会長が、あたかも現代医学を否定し、患者を病院から遠ざけているかのような印象をもってしまうと考えます。逆に言えば、そのような印象をもたせたいという意図を感じます。
朝日新聞社の一連のホメオパシー関連の記事を読みますと、当協会が現代医療(西洋医学)を否定しているかのようにとられかねない内容になっています。しかし、当協会は現代医療を否定してはおらず、現代医療と協力してやっていくという立場をとっており、協会会員に周知徹底しています。現に、日本ホメオパシー医学協会 認定(プロフェッショナル)ホメオパス倫理規程で下記のように定義しています。
プロフェッショナルホメオパス倫理規程第3条3項により
「本協会認定ホメオパスは、クライアントが病院での検査、診察等 (以下、検診という)を受けることに否定的であってはならない。
病院での検診が必要と判断される場合は、速やかにその旨をクライアントに伝えなければならない。なお、検診を受けるか否かの最終判断は、あくまでもクライアントが行うものであり、本協会認定ホメオパスが強制することはあってはならない。
ただし、慢性疾患のクライアントに対しては、病院での定期的な検診を勧めることが望ましい。」
このように当協会は、会員規定にも盛り込みきちんとやっていますし、由井会長も学校の講義においても折りに付け現代医療の重要性について学生、ホメオパスに説明しています。したがって当協会会員のクライアントに関しては、患者が極論を信じ病院に行くのを拒否するということは通常生じ得ないと認識しています。
症状は有り難いという主旨は、臓器不全などの重疾患から生じる症状などは別として、症状というものは基本的に体内老廃物を排出しようとしている現れであり、それは自己治癒力が向上することで、自己と非自己を認識する力(免疫力)が向上し、結果、自分でない異物を排出する力が向上し、排泄がより多くなるということがあり、これを好転反応としています。このように排泄症状としての症状は体内浄化のために必要なプロセスであると考えています。好転反応についての考えは、ホメオパシーに限らず、代替療法において一般的であると考えます。記事にするのであれば、極論で片づけるのではなく、きちんと好転反応の意味することを説明する責任があると考えます。もちろん、好転反応といえども、絶対、薬で抑圧してはならないということではなく、症状の程度とクライアントの状況によって臨機応変に対応するものであります。このようなことは説明するまでもなく当然のことであると考えます。
しかし、ホメオパシーは200年の歴史の中に膨大な治癒実績があります。もし、好転反応を全面否定もしくは過剰に否定するとしたら、排泄としての症状を過剰に恐れさせ、本来不必要な薬の使用や安易な薬での症状の抑圧に繋がるものです。このような本来止めるべきでない排泄症状としての症状の抑圧を何度も繰り返していると、体内老廃物は排出する出口を失い、やがて重い疾患へと繋がっていくと考えます。JPHMAとしては、この記事を読んだ多くの人が、ある意味、梅沢医師の言葉を流用するなら、症状はすぐに薬で止めるべきであるという極論を信じた結果、患者が、体内老廃物を排泄し健康になろうとしているにもかかわず、悪くなっていると思い込み、安易にそして過剰に症状を抑圧する方向に向かうことがあるとするならば、それこそが危険であると考えます。そして日本国民がホメオパシーの恩恵に与る機会から遠ざけることになるとしたら、それはとても残念なことであります。
7月31日 朝日新聞(Be report 長野剛記者)
(14)「がん治療も可能かと聞くと、「そうです」と由井会長は力強く答えた。」
由井会長の発言と掲載されていますが、実際のインタビューの流れから、必ずしも力強く答えたのではありません。ホメオパシーは自己治癒力を触発する療法で、どんな病気も自らの自己治癒力で治っていくのですが、どのような文脈の中で語ったのかということがわからないと、この文章だけをみると読者に誤解される可能性があります。取材時のインタビュー全文を確認ください。
長野剛記者のやり方は別件にても明らかにしていきます。そこでは、由井会長への取材内容から、由井会長の発言を都合よく抜き出し、そのまま、記事掲載をしようという意図がくみ取れる質問状が送られてきましたので、前述したとおり、長野剛記者に注意を呼びかけています。
多くの読者、朝日新聞のネット配信記事や朝日新聞 長野剛記者がブログを書いているアピタルなどの情報を通じて、多くの国民に対し、ホメオパシー、日本ホメオパシー医学協会、また、由井寅子JPHMA会長、JPHMAに所属する会員助産師に対して、間違った認識を与える非常に不適切なものであります。さらに、山口地裁の件などについて行われたその後の朝日新聞社の取材と事実でない8月5日の片寄った事実でない報道(東京本社医療グル―プ 岡崎明子記者)をしています。
長野剛記者は新聞社としてはホメオパシーについて「公平に」事実を報道するためにと、他の関係者にも取材したいと何度も言われていました。何をもって「公平に」と言っていたのでしょうか。結果、実際に掲載された記事や、長野記者が発言しているブログの内容がそれを裏付けています。
公平とは、偏見を持たない、賛成、反対など立場の違うものの意見もしっかりと取材して、先入観なく公平にインタビューし事実を正確に判断、検証して記事にするというのが記者のモラルと考えます。
7月31日 朝日新聞(Be report 長野剛記者)
(15)「分子が1個も残らないほど希釈するのだから、レメディーは単なる「砂糖粒」とした上で、「最大の問題は、現代医学を否定し、患者を病院から遠ざける点にある」と指摘する。」
上記はニセ科学に詳しい大阪大学の菊池誠教授の発言として紹介しています。菊池誠氏については、既成理論からホメオパシーの有効性を説明できないという理由でホメオパシーを似非科学と断定し、ホメオパシーの有効性を示唆するものは無視するという科学的態度と無縁の人物です。そして長い間、彼自身のブログにてホメオパシー叩きをやってきていることで有名な人です。公正な取材は、菊池氏のようなホメオパシーに対して偏見をもつ人物ではなく、少なくともホメオパシーに偏見をもたず、中立な立場で使用して研究したことのある人物に行うべきと考えます。
7月31日 朝日新聞 Be report 長野剛記者
(16)埼玉医科大学の大野智講師の「日本の行政はホメオパシーを含む代替医療について、ずっと当たらず障らずの立場を続けてきた。効かないものは効かないということも、国は情報発信すべきだ」
上記の意見はもっともだと思います。この大野智講師がどういう研究結果を前提としてこのような発言をされたのかが明確になっていません。すなわち、たとえば末期ガン患者へのホメオパシーへの有効性についてなのか、ガンに限らずホメオパシーの有効性を否定しているのかが明確になっていません。何か恣意的に情報を操作している感が否めません。
当協会が言えることは、前提として、「ではなぜ、200年間にわたって全世界に広がり、いまや漢方、食事・栄養療法などと並び、主要な代替医療、健康法としてホメオパシーが取り組まれてきたのか」、補完・代替医療として世界各国が取り組み、多くの医師、療法家が取り組んでいることにはそれなりの理由があるからです。科学的なメカニズムがまだ実証されていないからといって、その療法自体に価値を認めないということではなく、臨床成果などの事実から、エビデンスを積み重ねていく態度が必要だと考えます。学術成果を検証していただくためにも、是非多くの方に、日本ホメオパシー医学協会 第11回コングレス(学術集会)へ参加していただきたいと思います。
以下「朝日新聞記者行動基準」より、「公正な報道」の部分を引用します。
公正な報道
- 正確さを何より優先する。捏造や歪曲、事実に基づかない記事は、報道の信頼をもっとも損なう。原稿はもちろん、取材メモなど報道にかかわる一切の記録・報告に、虚偽や捏造、誇張があってはならない。
- 筆者が自分であれ他の記者であれ、記事に誤りがあることに気づいたときは、速やかに是正の措置をとる。
- 記事を構成する情報の出所は、読者がその記事の信頼性を判断するための重要な要素であり、可能なかぎり明示する。
- 客観的事実を伝える記事と主張・評論の記事との区別が、読者に分かるようにする。
- 記事が特定の個人や法人などを批判する場合、その当事者の言い分を掲載するよう努める。
上記照らして見たときに、今回の長野剛記者の取材のしかた、記事の報道のしかたには、多くの問題があることがわかります。このような取材方法と片寄った報道が許されてよいのでしょうか?
JPHMAから発信されるこのような情報は、朝日新聞社の記事を見る人々の1000分の1ほどしか目にされることはないでしょう。多くの人は朝日新聞の記事をそのまま信じてしまっていると思います。しかしJPHMAとしては、少数ながらもJPHMAを応援してくれる人がいる以上、朝日新聞の取材のやりかた、報道のしかたなどを含め真実を伝えていくことが大切であると考え、これからも情報を発信していきます。そしてそれをどのように受け取るかは、一人一人の判断に委ねたいと思います。