ホメオパシー新聞その4 「ホメオパシー利用者 複数死亡例 通常の医療行為を拒否」(8月11日付朝日新聞朝刊 社会面掲載 担当 朝日新聞東京本社 科学医療グループ 長野剛記者と同医療グループ 岡崎明子記者)

「ホメオパシー利用者 複数死亡例 通常の医療行為を拒否」
(8月11日付朝日新聞朝刊 社会面掲載
担当 朝日新聞東京本社 科学医療グループ 長野剛記者と同医療グループ 岡崎明子記者)

8月11日付け朝日新聞朝刊社会面で報道され、朝日新聞東京本社科学医療グループ長野剛記者、同医療グループ岡崎明子記者が担当し、「ホメオパシー利用者 複数死亡例」と報じられた記事について日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)よりコメントします。

2010年8月11日、朝日新聞東京本社 科学医療グループ 長野剛、岡崎明子記者
(1)「ホメオパシー利用者 複数死亡例」

「ホメオパシー利用者 複数死亡例」という見出しを人が見た場合、ホメオパシー療法で直接的に死亡したと思うことでしょう。つまり多くの人が、ホメオパシーは危険な療法であるというイメージをもつことになってしまいます。しかし、実際のところホメオパシー療法で死ぬことはありません。これは最も安全な代替療法の1つであるホメオパシーを著しく誤解させるものです。人間ですから報道する側も感情と利権が入り込む事もあろうかと思いますが、公に伝えることを職業にしている記者は、事実を正確に書く訓練がなされなければなりません。そうしないと報道の意図的操作に繋がってしまうことになります。

2010年8月11日、朝日新聞東京本社 科学医療グループ 長野剛、岡崎明子記者
(2)「通常の医療行為を拒否」

今回の記事は、全体的に「ホメオパシー利用者」と「通常の医療を拒否する人」という、この二つの異なる事象を結びつけた報道になっていますが、この二つを結びつけるだけの十分な根拠があって報道しているのか疑問に思います。

ホメオパシー利用者は日本国内だけでおそらく何十万人います。そしてホメオパシーと関係なく、通常の医療を受けることを拒否する人もおそらく何百万人といるでしょう。たとえば、かぜを引いたときに病院に行ったり薬をとることを拒否する人などはさらに多くいるでしょう。重病なのに、通常の医療を拒否する人もおそらくたくさんいるのではないかと思います。もちろん、ホメオパシー利用者の中にも頑なに現代医療を拒否している人はいると思います。

その点を考慮し、由井会長自らも、日頃の講演でもよく「ホメオパシーが絶対正しいとし、現代医療を頑なに拒否することのないようにして下さい。そのような人がホメオパシーを潰すことに繋がってしまうのですよ。必要なときは病院に行きましょう。
薬もとりましょう。臨機応変に対応しましょう。」と注意を促しています。

ホメオパシーを推進している団体として、当協会としても、ホメオパシー利用者が、ホメオパシーを愛好するあまり、現代医療を頑なに拒否するということがないよう、当協会や普及団体を通して発信していくと同時に、協会会員に今一度指導の徹底を図っていきたいと考えます。

しかしながら、ホメオパシー利用者であるなしにかかわらず、頑なに現代医療を拒否する人はいます。
特に、過去に現代医療を受けてとても辛い経験をしたしたことがある人は、その傾向が強いようです。

本来、どのような医療を選択するかは、個人の尊厳(憲法13条)で保障されている自己決定権として、個人の自由意志に基づいて行われるべきものであり、個人の信条に立ち入ることができない部分があるということは、理解されなければならない点であると考えます。もし、それを超えて、立ち入ることが許される人がいるとしたら、それは唯一、親ではないかと思います。
今回の2件の死亡例をホメオパシーと結びつけて大きく報道することは、公正な報道の在り方として正しくないと考えます。まして「ホメオパシー利用者複数死亡例」とか「ホメオパシーを利用している人の中で、病気が悪化して死亡する例が相次いでいる。」として記事を報道することは、ホメオパシー叩きを目的とした情報操作であるように考えられます。

2010年8月11日、朝日新聞東京本社 科学医療グループ 長野剛、岡崎明子記者
(3)「代替療法ホメオパシーを利用している人の中で、病気が悪化して死亡する例が相次いでいる。」

上述した通り、ホメオパシーが死因でもないにもかかわらず、上記のように書かれると、多くの人が、ホメオパシーは危険は療法であると誤解してしまうことでしょう。まるで多くの人が誤解するよう意図して書かれているようにも思えます。

2010年8月11日、朝日新聞東京本社 科学医療グループ 長野剛、岡崎明子記者
(4)「さいたま市では昨年5月、生後6カ月の男児が体重5千グラム前後の低体重のまま死亡した。両親は助産師の勧めでホメオパシーに傾倒。市によると、病院での男児のアトピー性皮膚炎の治療や予防接種も拒否していたという。市児童相談所は、病院の受診拒否などを虐待と判断。保健師の指導で男児が4月に入院した際、両親が連れ戻さないよう病院に要請していた。男児は5月2日に死亡した。」

本ケースは司法解剖も行われており、事件性がないことが明らかになっています。すなわち、乳児の死亡とホメオパシーの因果関係がないことはもちろん、虐待もなかったということが判明しています。このようにホメオパシーと関係のないことをあたかもホメオパシーとの関連において死亡したかのような印象をもつように記事全体が構成されています。

このケースは、児童虐待の事実がしっかりと確認できない中、虐待の通報が児童相談所になされ、その延長線上で、一方的に母子が引き離された後に容態が急変し亡くなった事例です。まだ赤ちゃんなのですから、突然母親と引き離されてしまったらやっぱりとても不安で恐怖になったと思うのです。母子が一緒にいることがとても大事なことだったと思います。

朝日新聞の報道で問題なのは、このケースのようにホメオパシーやホメオパスと直接的に関係のないケースもホメオパシー利用者ということで、ホメオパシーとの関連において報道し、いかにもホメオパシーに問題があるかのようなニュアンスを醸し出していることです。ホメオパシー叩きを目的に報道しているようにしか見えません。

またこのケースは、実際に虐待がなかったことが判明し終息しているにもかかわらず、わざわざ1年前のことを掘り起こし、「市児童相談所は、病院の受診拒否などを虐待と判断」とあたかも虐待があったかのように記事を書き、全国紙で報道するというのは、虐待の嫌疑をかけられ子どもを引き離された中で子どもを亡くしたご両親の悲しみの心情を考えたとき、報道倫理において問題ないのだろうかと思ってしまいます。ホメオパシー利用者で死亡例を見つけることができず、「ホメオパシー利用者、複数死亡」あるいは「ホメオパシー利用者、相次いで死亡」という記事を書くために引っ張り出されたのでしょうか? もしそうだとしたらご両親への配慮に欠けるたいへん遺憾な報道だと思います。

長野剛記者が朝日新聞社のブログで、被害者がいなくて記事が書けないので、被害者を募集する、あるいは情報提供を募集するようなことが書かれていましたが、記者としての倫理観が欠如しているのではないかと思います。

また長野剛記者は、朝日新聞社のブログの中で以下のように述べています。

「私自身は、ホメオパシーのレメディー自体に、なんらかの効果があるとは思っていません。それは、記事にも紹介した2005年のランセットの論文や、その他のホメオパシー研究を集めて検証した論文が、妥当で説得力のあるものだと思っているからです。それは「効果がない」ことの検証になっています。もう一つ、理由があります。「効果がない」ことの検証ではありませんが、「効くわけ無い」という理屈です。(中略)。なお、「長野記者はレメディーを試したのか」とのご指摘も頂きました。試していません。私にとって、ホメオパシーの取材はどきどきするものです。正直にいって臆病者の私には、負のプラセボ効果がありそうです。

長野剛記者は本当に2005年のランセットの論文をきちんと解析し、検証したのでしょうか? 
この論文の不当性については、すでに以下で説明しています。
http://jphma.org/About_homoe/jphmh_be_report_20100811.html

また、英国エリザベス女王を担当する医師ホメオパスのピーター・フィッシャー氏も2006年にランセットの論文について批判しています。⇒http://www.jphma.org/fukyu/country_100814.html

ホメオパシーの有効性を示す文献はやまほどあるにもかかわらず、長野剛記者は 「なんらかの効果があるとは思っていません。」と決めつけ、効果がないと思う理由の一つが欠陥論文と言われているランセットの論文であり、もう一つの理由が「効くわけ無いという理屈です。」と言うわけです。一度もホメオパシーを試したことがない人が、200年の歴史の中で多くの治癒実績があり、たくさんの人の病気を治癒に導き、たくさんの人の命を救ってきたホメオパシーを効果がないと決めつけ、しかもその理由が「効くわけがないから」という言葉で片付けるわけです。事実を検証し、事実に基づき公正に報道することが、記者に求められる倫理、行動、責任であると考えますが、このように偏見にとらわれ事実を、直視できない長野剛記者が、公正な観点からホメオパシーの記事を書くことができるわけがないと思います。

2010年8月11日、朝日新聞東京本社 科学医療グループ 長野剛、岡崎明子記者
(5)「アトピー性皮膚炎の治療や予防接種も拒否していたという。市児童相談所は、病院の受診拒否などを虐待と判断。保健師の指導で男児が4月に入院した際、両親が連れ戻さないように要請していた。」

「アトピー性皮膚炎の治療や予防接種も拒否していたという。」とあたかも、このこと自体が虐待に当たるような書き方をしています。実際、予防接種をしていなかったとしても、予防接種は1994年、予防接種法改正により、義務接種でなく任意になっていますので、本人の責任において判断するものになっています。またアトピー性皮膚炎の対処で代替療法を親が選択したことが「虐待」と判断されるのでしょうか。

2010年8月11日、朝日新聞東京本社 科学医療グループ 長野剛、岡崎明子記者
(6)「5月16日、東京都東大和市内の病院の集中治療室。女性は、悪性リンパ腫が悪化して人工呼吸器を付け、声も出せない状態だった。親交のあった荒瀬牧彦牧師=めぐみ教会(東大和市)=が見舞うと、手話で3回、「ごめんなさい」と訴えた。ホメオパシーに頼り、前日に救急搬送されたばかり。入院から11日後に死亡した。
荒瀬牧師は「最後の最後になり、自分の誤りに気づいたのかもしれない」と話す。
両親によると、女性がホメオパシーを始めたのは3年前。離婚直後で精神的に不安定な時に友人に紹介された。昨春から体調を崩し、全身の痛み、強い肌荒れを訴え始めた。荒瀬牧師は何度も病院受診を勧めた。だが女性は「今までのホメオパシーの努力が無駄になる」と拒み続けたという。
5月には外出も困難に。激しい胸の痛みに母親(69)が救急車を呼ぼうとすると、「西洋医学はダメ」と最後まで拒んだ。気を失いかけたすきに、母親が救急車を要請。搬送先で、初めて悪性リンパ腫と診断された。」

上記の件についても、朝日新聞に掲載されたこれまでの記事内容から、正確な内容を伝える報道ではない可能性(恣意的に情報が加工された可能性)が高いと考えています。なお、本件につきましては8月初旬に荒瀬牧師から当協会に対して、要望書及び直接の打ち合わせを希望する手紙が届いており、現在、荒瀬牧師と打ち合わせの日程を調整しているところです。したがって、現段階でのコメントは控えたいと思います。

ビタミンKの件もそうですが、話し合いがなされる前や裁判が行われる前に一方の言い分をもとに事実の断片を個人の偏見に基づき報道することで、片寄った報道に繋がると考えています。

2010年8月11日、朝日新聞東京本社 科学医療グループ 長野剛、岡崎明子記者
(7)「ホメオパシーでは、病気の症状が重くなっても、自然治癒力が増した証拠の「好転反応」ととらえる。これが患者を病院から遠ざけているという指摘がある」

この記事には主語がなく、誰の指摘なのかが明かになっていません。
好転反応については、こちらの記事でコメントしていますので、参考にしてください。
http://jphma.org/About_homoe/jphmh_be_report_20100811.html

「ホメオパシーでは、病気の症状が重くなっても、自然治癒力が増した証拠の「好転反応」ととらえる。」とありますが、上記の書き方ですと、病気の症状が重くなったら無条件に好転反応と捉えるかのような印象をもちます。しかし疾患が進行し、病状が悪化することは好転反応とは言いません。疾患の進行による病状の悪化なのか排泄症状としての好転反応なのかの見極めは、経験を積んだプロのホメオパスであれば、概ね正確に判定できるとしても常に100%正確に判定できるものでありません。それは医師の診断にも同じように言えることだと思います。

したがって当協会会員がクライアントが病院に検査に行くことを止めることもないし、判断がつかないときはホメオパスが積極的にクライアントに検査をすすめることになっています。もちろん、重病人の場合は病院にかかりながらホメオパシー療法をすることが大事であると考えていますし、医師とホメオパスが協力して治療にあたる場合もあります。このように医師とホメオパスが、現代医学とホメオパシー医学のそれぞれの専門性を生かし、協力し合うことが大切でありクライアントの利益になると考えます。

なお、今回のこの記事が出る前に長野剛記者から7月31日のBe Reportの取材でインタビューしたときの由井会長が話した内容からの引用として、間違いないかどうかの確認を求めるファックスが時間指定で送られてきました。

これによってそのとき取材した内容を流用して再び長野記者が記事を書こうとしていることがわかりましたが、そのときに長野剛記者が由井会長の発言として現在も同じ考えであるかとJPHMAに確認してきた内容が、話の流れの中で解釈されるべき発言を部分的にピックアップしていたことから、前回同様今回の記事でもまた、取材の中での由井会長の発言を恣意的に加工し使われる可能性がきわめて高いと判断しました。この危険性を察知し、長野剛記者には事前に注意を促しています。このやりとりに関しては今後掲載していきます。

長野剛記者がピックアップした言葉と今回の記事内容から推測できることは、由井会長の考えのもと、当協会の会員が通常の医療行為を拒否する過激なグループでそれによって死者が相次いでいるかのような印象を読者に与える記事を書こうとしていた可能性が高いということです。しかし、上述した通り、事前に注意を促す文書を送ることで、長野剛記者としてもそれを使って、簡単に記事にすることができなくなったと考えています。

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