講演者プロフィール
川田 薫「超微量の世界―ミネラルと水を中心に―」
地球表層の大陸、海底そしてマントルの三層の代表的な岩石からミネラルを抽出し、その性質を調べると際立った違いがあることが判明している。
○ 大陸の代表的な岩石(花崗岩)から抽出した溶液は生理活性を示す
○ 海底の代表的な岩石(玄武岩)から抽出した溶液はある種の界面活性をしめす。
○ マントル上部の代表的な岩石(橄欖岩)から抽出した溶液は水を浄化する働きがある。
この違いは岩石の差である。岩石は鉱物の集合体であるから、鉱物の性質を反映したものだと考えればいい(鉱物をミネラルといい元素とは厳密に区別している)。
鉱物の性質を反映した溶液とは、ミネラルの抽出に際してミネラルの超微粒子が溶媒の中に分散したものだと考えればいいことになる。それでは、この超微粒子はどの位の大きさであろうか。花崗岩の抽出液が生理活性ということから、この溶液は触媒機能を持っていると考えられる。触媒機能を持つためには、ミネラルの大きさは小さくて1nm(ナノメートル)、どんなに大きくても5nm以上ではありえないことが超微粒子の研究から容易に想像できる。
1~5nmの大きさのものは電子顕微鏡以外の方法では確認できない。種々の困難を克服して溶液の電子顕微鏡写真を世界で初めて観察する事ができた。
その結果ミネラルは平均粒径2nmの一次粒子があり、それが合体して平均粒径20~30nmの二次粒子を形成し、この二次粒子がさらに合体して平均粒径100nmの三次粒子が2~3個合体して細長い形状の粒子として存在し、完全に入れ子構造のものであることが分かった。ミネラルのサイズは予想通りであったのである。しかも、平均粒径2nmの粒子を構成する全原子の80%は表面に出ているために触媒としての働きが大きいのである。
次に同様の手法で超純水の構造を調べた。水分子は四面体構造を持っているが、その集合体の一次粒子は平均2nmで、これが合体して平均20~30nmの二次粒子を形成している。そして、この二次粒子がさらに合体して平均100nmの三次粒子を形成し、ミネラルと全く同様の入れ子構造の断層構造をしていることが分かった。超純水の三次粒子は不純物を含んでいないために粒子表面の境界が雲のように不鮮明である。水がミネラルと非常に違うところは、これら入れ子構造の粒子が絶えず離合集散を繰り返していることである。
次に、超純水の上記のミネラルを700ppm、5ppm、7ppbと微量添加したときに、水の三次粒子がどのように変化するかを調べた。
700ppm添加したとき、水の三次粒子はミネラルの凝集力により粒子界面が鮮明になる。
5ppm添加したとき、水の三次粒子は三次元に綺麗に配列していることが分かった。5ppmという超微量のミネラルの存在によって水は秩序を持ったものに変るということである。
7ppb添加したとき、水の三次粒子は超純水の構造に近づくものと思われたが、予想とは全く異なり水は超微量の影響をしっかりと保持していたのである。
以上が水とミネラルの相互作用である。ミネラルの添加によって水の構造が大きく影響されることが世界で初めて明らかにされたのである。水の構造が変るということは水の諸性質が変ることを意味しているが、その詳細については不明のままである。
以上の結果を通して、さらに進んで10-12、10-15オーダーへと極微の世界に進めなかったことが今になって悔やまれる。それは、この研究をサポートしていただいた電子顕微鏡のエキスパートが既にこの世にいないからである。この研究は10-9のレベルで終わったが、それでも「超微量の世界」の糸口はつかめたのではないかと考えている。
「超微量の世界」はホメオパシーを先頭にして果実ホルモン(10-8)の世界から環境ホルモン(10-12)の世界、そして分析科学(10-15)の世界へと確実に広がっている。
今後は、ホメオパシーの有効性を不動のものとしてきた医療の世界とは別次元の世界からの課題として「ミネラルと菌類の相互作用」、「農薬とミネラルの相互作用」、「ミネラルの植物ホルモンへの影響」、「腐らない水」といった新しい分野の登場があり、その成果が期待されている。
第13回JPHMAコングレス 大会事務局からのコメント(追記)
水が入れ子構造の粒子(1次から3次粒子)をもっていることも、それが絶えず離合集散を繰り返していることも、それがリズム運動していることも、ミネラルを入れると水が三次元的に構造化することも、微量にしてもその構造が維持されることも、ミネラルを入れることで水の離合集散速度が変化することも、全て川田先生がご自分で実験確認し、論文や学会で報告されたものです。
今回の発表では、世界で初めて撮影に成功した水の3次粒子の電子顕微鏡写真やミネラルを入れて三次元的に構造化した水の電子顕微鏡写真も公開する予定です。
川田 薫 氏 プロフィール
- 昭和9年(1934)
- 7月 北海道に誕生
- 昭和32年(1957)
- 3月 東京理科大学理学部物理学科卒業
- 昭和39年(1964)
- 3月 同大学院修士課程修了
- 昭和39年(1964)
- 4月 東京大学地震研究所
- 昭和44年(1969)
- 4月 東京大学物性研究所
- 昭和53年(1978)
- 1月 東京大学理学部より理学博士
- 昭和54年(1979)
- 4月 三菱マテリアル中央研究所入社
- 昭和57~58年
(1982~1983) - 科学技術委員会委員(21世紀の世界をリードするにたる 技術の選択会議)
- 昭和59年(1984)
- 科学技術庁極限技術評価委員(超高圧)
- 昭和60年(1985)
- 通産省レーザー利用技術委員(化学反応への応用)
- 昭和61年(1986)
- 科学技術庁 超高温技術評価委員(プラズマ技術委員会)
- 昭和62年(1987)
- 通産省 レーザー利用研究会委員
科学技術庁 超高温技術評価委員(プラズマ及びレーザー技術)
通産省 金研センター、レアメタル部会レーザー部門委員長 (金属超純水化技術) - 昭和63年(1988)
- 3月 三菱マテリアル中央研究所 退社
- 昭和63年(1988)
- 8月 天然総合ミネラル液の開発
- 平成3年(1991)
- 12月 新技術振興事業団「さきがけ研究21」スタート
- 平成6年(1994)
- 12月 「さきがけ研究21」終了、生命体誕生実験に成功
- 平成7年(1995)
- 1月 (有)川田研究所スタート
- 平成13年(2001)
- 洋上設置型海洋深層水取水装置による海洋深層水の調査研究
- 平成16年(2004)
- 4月 高野山大学大学院文学研究科密教学専攻通信教育課程入学
- 平成18年(2006)
- 4月 高野山大学文学部客員教授
- 平成19年(2007)
- 3月 高野山大学大学院修了文学修士
- 平成24年(2012)
- 6月 高野山大学密教文化研究所委託研究員
現在に至る