世界と日本における現状

目次

世界の現状

約200年前にドイツ人医師 サミュエル・ハーネマンにより確立されたホメオパシーはその後、多くの臨床での治癒ケースを積み重ね、世界各地に広まり、特に欧州、インド、中近東、ラテンアメリカなどでは、民間代替療法のエース的存在と位置づけられています。

英国では王室の健康法としても親しまれており、英国国会で「最も安全な療法」と認められたほか、インドでは、19世紀初めには英国植民地下で英国からホメオパシーが入り、インドが独立後、1952年に国家が国の医学としてホメオパシーを認め、今でも70%の人口がホメオパシーを使っており、ホメオパシーが最も盛んな国の1つです。インドの他にも、ドイツ、南アフリカ、マレーシアなど、国家がホメオパシーを認めていたり、4-6年制の大学教育課程があり、ホメオパシー医学の専門家育成に力を入れている国も多い。

ホメオパシーが特に盛んに行われている国・地域は、EU諸国(英、独、仏、伊、ベネルクス3国、北欧他)、スイス、インド周辺諸国(インド、パキスタン、バングラディッシュ、スリランカ)、中近東(イラン、イスラエル)、中央アジア、ロシア、中南米諸国(ブラジル、キューバ他)、マレーシア、南アフリカ、オーストラリア、ニュージランドなど、米国、カナダなどにもホメオパシーの協会があり、世界で推定15~20億人が親しんでいる最もポピュラーな健康法の1つでもあります。

英国では、誰がホメオパシーを治療しているのか?

1.The Practice of Homeopathy by Voluntarily Self-Regulated Health Care Practitioners

任意自己規制健康保健治療者によるホメオパシー治療

英国では、任意自己規制のホメオパシー職業団体が存在します。 この団体の役割は、会員への職業保険提供、会員登録への資格条件決定、会員規定決定、職業的倫理決定、継続される職業的発展機会の供給、などが主です。 ホメオパシーの学校を卒業した者達は、任意自己規制ホメオパシー団体のいづれかの会員になるのが通常です。その団体が提供する職業保険は、ホメオパスとしての自分の立場、ホメオパシーを受ける患者の立場を守るもので、加入しているという事が常識となっています。

主なホメオパシー団体 (アルファベット順)
  • The Alliance of Registered Homeopaths
  • The Faculty of Homeopathy
    (法廷で定められた保健従事者のみの団体)
  • The Homeopathic Medical Association
  • The Society of Homoeopaths

現在、CORH (Council of Organisations Registering Homeopaths)という団体が、英国のホメオパシー団体を統一する為の活動を行っています。

これらの協会は、英国政府が認定する国家職業基準を遵守する協会として登録されいます。

2.The Practice of Homeopathy by Statutorily Registered Health Care Professionals

法令で定められた健康保健従事者によるホメオパシー治療

Homeopathy is used by a wide range of practitioners, many of whom are statutorily registered health care professionals. Medical practitioners, veterinary surgeons, dentists, midwives, nurses, pharmacists and podiatrists all use homeopathy for their patients as part of their therapeutic repertoire, and within the normal bounds of their profession. This means that they use their clinical judgement, within the clinical context in which they work, to determine the extent to which homeopathy is relevant to their patients.
ホメオパシーは、幅広い治療家達、法令で定められた健康保健従事者の多くに使用されています。医師、獣医、歯科医、助産婦、看護婦、薬剤師、足治療家、皆、自分達の治療法レパートリーの一つとして、彼らの専門の範囲内で、自分の患者の為にホメオパシーを使用しています。これは、ホメオパシーが、その患者に適しているかを決定する為、彼らの取り組んでいる臨床的内容内で、臨床判断をするという意味です。
The primary professional affiliation of registered health care professionals is to their particular profession. A homeopathic dentist or veterinary surgeon, for example, will use homeopathy as one of the many tools at his or her disposal to speed the healing of the patient.
法令で定められた健康保健従事者の主要所属先は、彼らの専門分野です。例えば、ホメオパシー歯科医やホメオパシー獣医は、自己の患者の治癒を速める為、自身の自由裁量で多くのツールの一つとしてホメオパシーを使用するでしょう。
As stated above, these standards describe the practice of practitioners whose sole or primary practice is homeopathy. Such practitioners are not currently subject to statutory regulation.
先に記述がある様に、この職業基準は、ホメオパシーが唯一の又は主要である治療者の治療について描写されています。その様な治療者は、現在、国家規定に委ねられていません。
It is important to remember that statutorily registered health care professionals are legally required to maintain their registration with their respective professional governing body. That body is responsible for establishing standards of training, professional discipline and ethics and requirements for continuing professional development.
法令で定められた健康保健従事者は、それぞれの専門団体の登録を維持する事が法的に要求されている事を覚えておく事は重要です。その団体は、訓練の基準、職業的規律、そして倫理を確立する事に責任があり、継続される職業的発展が要求されています。

National Occupational Standards for Homeopathy :ホメオパシーに対する国家職業基準(HEALTHWORK UK)
  • この職業基準を遵守するホメオパシー職業団体は、自分達の規制に責任を持つこと、とあり、しっかりした規制を持つこれら団体に所属する事で、自己の専門性が保証されます。 ホメオパスを自分の専門職として全うしたい方は、プロフェッショナルホメオパス養成学校に行って学び、その後もしっかりした職業団体会員となるために、協会の認定試験に合格をして、活動をしていくことが必要とされています。また、そういった、ホメオパスを患者は、腕の良いホメオパスとして希望します。 また、補足情報としては、職業基準を遵守するホメオパシー職業団体は、CORH(英国全ホメオパス統合協会)という一つの協会が統一する事で、ホメオパスに対する基準も統一される事が見込まれています。

まとめ

英国では、「医師ホメオパス」と「プロフェッショナルホメオパス」という2つの言葉で区別されているのをたまに目にしますが、実は、「ホメオパシー治療を施すもの=ホメオパス」という観点では、どちらも同じ立場に居る事が、この職業基準の文章から判ります。

GP (General Practitioner:開業医)が、自分の患者には、現代医学よりホメオパシー医学の方が適しているだろうと判断し、ホメオパスに参照する場合、NHS(National Health Service:国民健康保険)が適用となり、その患者の診察代が国より負担されますが、参照されるホメオパスは、医師免許保持者である必要はありません。参照されたホメオパスは、ホメオパスの仕事をすべきだからです。

2006年5月現在の英国におけるホメオパスの数は、約3000名。

ホメオパシー

ホメオパシーは、英国では、現代医学に続き、二番目に多く使用されている医学とも耳にします。 ホメオパシーを支持する政府関連書面で、有名なものに、英国国会(上院)による「SIXTH REPORT 21 NOVEMBER 2000 BY Select Committee appointed to consider Science and Technology(科学とテクノロジーを考慮する為に任命された特別委員会による6番目のレポート。2000年11月21日)」があげられます。

そこでは、代替療法についての報告が成されていますが、ホメオパシーは、固有のアプローチを持つPrincipal Disciplines (主要分野)のグループに分類され、`ビッグ5’の一つに入っています。 (ホメオパシー以外は、整骨療法、カイロプラクティック、鍼療法、薬草学です。)

ホメオパシーの安全性に関しては、CHAPTER 4:Evidence(4章:証拠)にこう書かれています。

4.36 The arguments about homeopathy illustrate the weight given to understanding mechanisms of action. The Department of Health explained their position on homeopathy which clearly shows they prioritise safety before anything else and give less weight to issues of scientific plausibility: “In relation to homeopathic medicines, we very much agree that there is uncertainty, or limited evidence, about the specific mechanism whereby homeopathy works. The starting point is that homeopathic medicines as such are very much at the safe end of the spectrum; they are very dilute. Often these substances do not have a clearly measurable effect on the body, which is why the simplified homeopathic registration scheme introduced in 1994 concentrates specifically on safety and quality and not efficacy. W e have taken a fairly pragmatic approach: if homeopathy does not harm then it is less important to have an in-depth understanding of its mechanism for effectiveness” (Q 34).
ホメオパシーにおける議論は、作用メカニズム理解に与えられている比重を例証 している。保健省は、科学的根拠についてを重要視せず、何よりも先に安全性に 優先順位をつける事を明らかに示すホメオパシーの位置づけを説明した:`ホメ オパシー薬(レメディー)に関して、如何にホメオパシーが作用するか特定のメカ ニズムに関し、不確実で証拠に限界がある点に十分同意する。話を始めるポイン トは、ホメオパシーのレメディーについては、安全境界範囲にある:非常に希釈 されているこれら物質は、身体における影響を明らかに測定できるものではなく、 それ故、簡素化されたホメオパシーの登録施策が1994年に導入された。それは、 有効性についてではなく、ホメオパシーの安全性と品質に特に集中されたもので ある。私達は、合法的に実用的アプローチを選択する:ホメオパシーが有害でな いならば、その効果についてのメカニズム(根拠)における徹底的な理解を持つ事 は、それ程、重要でない。

SIXTH REPORT 21 NOVEMBER 2000 BY Select Committee appointed to consider Science and Technology

ホメオパシーレメディー

ホメオパシー治療に使用されるレメディーは、その高希釈から安全性が認められ ており、ホメオパシー専門ファーマシーのみならず、大手スーパーマーケットな どでも手軽に購入する事ができます。

ホメオパス職業保険(ホメオパス賠償責任保険)に対する英国を代表する三つのホメオパシー協会の見解

  • 英国ホメオパシー医学協会(HMA)
    認定会員は、HMAグループ保険の下、個人的診療過誤保険、過失、第三者保険 に加入する責任があります。
  • 英国ホメオパス連合(ARH)
    全ての英国をベースとするARH登録会員、また、登録手続きを通る会員は、保 険に加入しなければなりません。ARHは、英国で治療している全ての登録ホメオ パスに保険に入る事を要求し、また、登録過程にいる全ての卒業生達にも要求し ます。患者を診る全ての学生にも保険に入る事を推奨します。保険は、公衆に対 し、自分がコンサルテーションを受けている治療者の専門的技術に対する信頼を 与えます。また、ホメオパスにとっては、患者の苦情に関わった際、サポートを 提供します。 保険は、どの責任ある保健ケア職業人に対しても期待されているものです。
  • 英国ホメオパス協会(SoH)
    ソサエティーの登録会員は、全て保険料込みの年会費を支払わなければなりま せん(全員、保険に加入しなければなりません)。ただし、ホメオパシーよりリ スクの高い治療も兼ねている人々。鍼灸師などは、ホメオパシーとは異なる保険 に加入する必要があります。

日本における現状

「日本でのホメオパシーの歴史」が世界最大のホメオパシーポータルサイトに紹介されました。

日本では、もともと、自然治癒力を触発するホメオパシー(同種療法)の発想は、日本の伝統的民間医療の中で受けつがれてきたことが、最近の研究で明らかになってきています。明治時代では、森鴎外の『カズイスチカ』(1911、明治44)に、鴎外の父をモデルとしたと言われていますが、主人公の父が行っている医学として一部紹介されている程度にとどまっています。

昭和初期は米国でホメオパシーが隆盛であったことから、日本にも昭和8年アメリカのボエリック・タフエル社製のホメオパシー薬剤を輸入販売する会社「福音公司」があり、その東京支店が目黒区にあり、その会社からホメオパシー薬剤と称する同種療法の本が出版されています。また、昭和初期には香川県の丸亀にホメオパシーを作る工場がつくられ(その後閉鎖)、当時の首相「鈴木實(すずきまこと)」は、ホメオパシーを「良薬に国境なし(良薬無国境)」と紹介しています。第二次大戦後は、エリザベス女王来日の際など、一部ホメオパシーが注目されることはありましたが、ホメオパシー海外からの帰国者や研究者の間で、ホメオパシーが紹介された程度で、ほんの10年前までは、日本でのホメオパシーの普及はほとんど進まなかったという状況でありました。

日本人では初めて英国ホメオパシー医学協会(HMA)の認定ホメオパス試験に合格し、英国でホメオパシーとして開業していた、現JPHMA会長の由井寅子が、帰国し、日本で、専門家育成の教育機関であるロイヤル・アカデミー・オブ・ホメオパシーを1997年に立ち上げ、翌98年に学術・職業・普及団体としての日本ホメオパシー医学協会を立ち上げ、ホメオパシーのユーザー会としてホメオパシーとらのこ会も同年スタートして以降、日本でも、ホメオパシーが急速に浸透していくこととなります。

2008年6月現在、JPHMAに登録する認定ホメオパスが360名を超え、全国でホメオパシー健康相談を受けられるセンターも、約180ヶ所となりました。また地域で、家庭で、健康のセルフケアにホメオパシーを取り組まれる方も増え、ホメオパシーとらのこ会に登録され、ホメオパシーを活用されている会員の数も2万人を超えるようになりました。また、100冊を超えるホメオパシー関連の書籍が既に翻訳、出版されており、毎日のように、各地でセミナーや講習会が開かれており、日本でもホメオパシーは、身近な存在になりつつあります。

目次