「ホメオパシーはプラシーボ以上のものではない」と結論づけた医学誌<ランセット>2005年8月27日号論文は、欠陥論文であることを、科学雑誌「ニューサイエンティスト」誌のコンサルタント、マイケル・ ブルックス氏が「まだ科学で解けない13の謎」(楡井浩一訳 草思社)で言及している。
「13 THINGS THAT DON’T MAKE SENSE THE MOST INTRIGUING SCIENTIFIC MYSTERIES OF OUR TIME」 (邦訳題 『まだ科学で解けない13の謎』)
この本の中で、ブルックス氏は、ベルン大学のシャン氏とその研究チームが<ランセット>で発表した上記論文については、ホメオパシー共鳴者でないクラウス・リンデとウェイン・ジョナスなど、複数の科学者が欠陥論文であると指摘していることを書いており<ランセット>ともあろうものが、この手の「不備のある」調査結果を掲載したことに愕然としていたことに触れている。
同書の第13章(304ページ)以降もこの件について触れられているので、是非、興味のある方は、読んでみてほしい。
同書では、まだ科学では解明されていない13のテーマを取り上げて論じている。12番目は、プラシーボ効果(ニセ薬でも効くなら、本物の薬はどう評価すべきか?)、13番目に、ホメオパシー・同種療法 (明らかに不合理なのになぜ世界じゅうで普及しているのか?)など興味深いテーマを取り上げ、現代科学では解明できないテーマであることを述べ、ホメオパシーについても、賛否両論の立場から論じている。そして、そこには非常に示唆に富む内容も含まれている。
『水の記憶事件 』ベンベニスト博士の功績
『まだ科学で解けない13の謎』では、フランスの偉大な科学者であるベンベニスト博士について記述した部分がありますが、内容的には事実と異なり、博士の名誉に関わる問題なので、この点をここでコメントする。そして、ここで言及しなければならないのは、世界で最も影響ある科学誌とされる<ネイチャー>の過ちに関わるものである。
ベンベニスト博士は、2度ノーベル賞にもノミネートされたフランス人科学者ですが、<ネイチャー>に「高希釈された抗血清中の抗免疫グロブリンE(IgE抗体)によって誘発されるヒト好塩基球の脱顆粒化」と 題された論文を掲載した。これはホメオパシーの有効性を証明した論文であり、「水は記憶できる! 水を通過した物資のしるしを水は記憶できる」というまさに革新的な科学的事実であったのだが、発表後、数週間後に、再検証の名のもとに特別な<ネイチャー>の調査チームが組織され、ホメオパシー懐疑論者で手品師でもあるジェイムズ・ランディーなどによるデッチ上げ検証で、彼の論文はインチキ論文に仕立て上げられる。2年後、ベンベニスト博士はフランス科学界から失脚させられたのである。ベンベニスト博士は名誉を回復されることもなく、2004年10月3日に不遇な死を遂げたのである。
そして、ベンベニスト博士の死後、遺稿『真実の告白 水の記憶事件』が遺族によってフランスで出版され、ベストセラーとなる中でフランス国民は、この事件の真相を知ったのである。
ロイヤル・アカデミー・オブ・ホメオパシー(RAH)ではベンベニスト博士を招き、1998年に最新の成果を含め、日本で講義を実施したのである。そして『真実の告白 水の記憶事件』の日本語版を由井寅子監修でホメオパシー出版から出版し、フランスで起こったベンベニストの事件の真相を、日本の皆さんにも知って頂ける形となったのである。フランス科学界の内幕を赤裸々に描いた同書を多くの方に読まれることこそが問題の本質につながるだろう。
結局、ホメオパシーに関係しては、医学誌<ランセット>と科学誌<ネイチャー>という英文学術論文誌の双璧が、科学発展の歴史に汚点を残したのである。