金属鉱業や他の産業工程により環境に放出される水銀の量を大幅に低減しようと、現在、勢いを増しているグローバルイニシアチブ(国際指針)、この致死毒素への曝露を制限することによって住民の健康をより良く守ろうという動きがある。しかし、おかしなことに、正式には「水銀に関する水俣条約」として知られている、この前途有望な国際的取り組みから漏れているのが、ワクチンと歯の詰め物に使われ続けている水銀に関する討議である。
報道によれば、10月7日、世界中の政府官僚が、この条約が最終的に調印、締結される下準備となるであろう、条約の採択にどのように取り組むかについて話し合うために、日本の熊本で会議を開始した。ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の報告では、この条約は、参加国が水銀の使用と放出を広範囲な産業及び工程にわたって低減するよう規定することになるだろうとのことである。
この条約の目的に関して、HRWの児童の権利に関する上級研究員であるJuliane Kippenbergは言う。「世界中の何百万もの人々が水銀の毒にさらされています。この条約は、環境と健康に対する人権の両方を守るのに役立つでしょう。」
これは大いに結構なことである。というのも、国連環境計画(UNEP)から得られる最新の数字によれば、毎年2000トン近くの水銀の大気圏放出に責任のある世界産業にこの条約が関わるからである。世界の全水銀放出量の4分の3近くが、実際、小規模金鉱、石炭火力発電所および非鉄金属産出から発しているのである。
Kippenberg氏は続けてこの条約の重要性について語る。「水俣条約の下では、水銀に関する措置はもはや自主的な問題ではなくなります。この条約に署名・批准する政府は、いまや法的に採鉱時の水銀暴露を低減し、子供たちや出産適齢期の女性たちを保護するために特別な努力をする義務があります。」
水俣条約は、ワクチンや歯の詰め物の有毒な水銀汚染へ取り組みついては触れていない。しかし、地元の薬局、大規模小売店、あるいは職場でさえ積極的に推進されている複数回投与のインフルエンザワクチンなどを含む小児期ワクチンに意図的に加えられている水銀についてはどうだろう?あるいは、米国食品医薬品局(FDA)が脳障害を引き起こす可能性があると認めざるを得なかったにもかかわらず、今だに「安全」で歯科治療に使える素材として推進している水銀入りのアマルガムの詰め物についてはどうだろうか?
水俣条約は理論上は素晴らしいものであるが、あらゆる発信源からの水銀暴露を排除しようとする包括的な取り組みなしには、その効果は極めて限られてものとなる。一体全体、水俣条約は、直接人体に注入されなかったにしても、チメロサールや特定の医薬品に添加されていた水銀についてはどう対処するのだろう。なおかつ、ワクチンや歯の詰め物に今だに入っている水銀は完全に無視するのだろうか。
目下、ワクチンや歯の詰め物に入っている水銀のことに一切言及せず、全く同じことを行おうとして国際条約が検討されている一方で、ワクチンや歯の詰め物から水銀を取り除くことを目指して活動している「水銀に反対する母親たち」のような草の根(市民参加型)擁護ネットワークグループが、こうした大元から発生する水銀より住民を守ろうとしていることに対して、あけすけに馬鹿にされたり一蹴されたりするのは、極めて懸念すべきことである。
Kippenberg氏は、自然健康団体が何年にもわたって言い続けていることに賛同し、以下のように認めている。「世界中の人々が現在、水銀の害を受けています。政府は、鉱業や他の産業における水銀の使用・放出の低減を今すぐ開始することで、人の命と国民の健康を救うべきです。」
我々は、もちろんこの意見に全面的に賛成である。しかしまた、政府に対して、ワクチンと歯の詰め物の両方に含まれる水銀にも問題があることを最終的に認めるよう求めるものである。水俣条約からこれらの明らかな抜け落ちがあると、ワクチンや歯の詰め物に含まれる水銀暴露に端を発する腎不全、呼吸不全、死亡のような事柄に対して最終的に国民を守りそこねてしまうことになるだろう。