ドイツ最大の医科学専門出版社ティーメ社が発行し、世界で多くのホメオパスに読まれており、査読審査のあるホメオパシージャーナルとして名高い学術誌「Homoeopathic LINKS(ホメオパシック・リンクス)」に由井寅子会長の論説が掲載されました。
今回の2016年3月発行の特集号では、歴史的検証に基づく執筆・公開では国際的に定評のある著名なホメオパシー歴史家、ピーター・モレル氏が特別に監修を務め、世界の各大陸からの論説が選ばれ、東アジアからは由井会長の論説が紹介されました。
この特集号では、日本以外にも、イタリア、スウェーデン、アフリカ、ブラジル、ベルギー、英国、オランダ、インドのホメオパ シー発展の歴史と現状ついての記事が紹介されています。
※驚くべきことに、由井会長の今回の論説(論文)は、過去のホメオパシーリンクスに公表掲載された数多くの論文の中で、「最も読まれている論文」第10位に既にランキングされています。
Contemporary Homoeopathy in Japan
日本における現代のホメオパシー
※日本語訳 RAH英国本校 由井寅子 ホメオパシー博士、日本
【概要】
この論説で、著者は、日本におけるホメオパシーの歴史的背景と、彼女がZenホメオパシーを発展させた概略を描写する。
キーワード 古事記、坂口、RAH、CHhom、Zenホメオパシー、インナーチャイルド、価値観
【本文(日本語訳)】
日本におけるホメオパシーの歴史的背景
日本におけるホメオパシーの歴史は、未だ浅い。
しかし、日本の歴史を調査したところ、もともと、自然治癒力を触発するホメオパシー(同種療法)の発想は、日本の伝統的民間医療の中で受けつがれてきた事が明らかになっています。日本最古の書物古事記[1]の中でも、ホメオパシー的な考え方が紹介され、同種療法の思想は実は日本にも古来から息づいていたことが文献などの研究からわかっています。
江戸時代(1603~1868)には、ハーネマンやホメオパシーの名称に漢語があてられる程度で一部紹介されたようですが、訳本が出版されるまでには至らず、定着しなかった様です。その理由として二つ考えられます。第一に、ホメオパシーは生気論の流れに立つものの、その理論があまりにも教義的な性格をもつことです。理論よりも実践を尊ぶ、実用主義の日本人の感性には、ホメオパシーの理論は合致しなかったと思われます。第二に、当時の日本の医学は、植物性の薬物の内服を中心とした基本的には緩和なもので、鍼灸医学も日本的に繊細なものへと発展していたのです。また明治期以後、ヨーロッパからの医学に関する情報は増大しました。
第二次世界大戦前(1941年以前)のアメリカでホメオパシー隆盛の頃、日本にも昭和8年アメリカのボエリック・タフエル社製のホメオパシー薬剤を輸入販売する会社「福音公司」があり、その東京支店が目黒区にありました。その会社からホメオパシー薬剤と称する同種療法の本が出版されています。また、昭和初期には香川県の丸亀にホメオパシーを作る工場がつくられ、当時の首相「齋藤實(さいとうまこと)」は、ホメオパシーを「良薬に国境なし(良薬無国境)」と記しています。 なお、日本の医学は、第二次世界大戦後、米国に占領される前の日本は自然治癒力をベースにしたドイツ医学の影響を大きく受けていましたが、戦後はアメリカの現代医学・薬学の影響を大きく受ける形へと変わっていきます。
戦後(1945年)間もない頃、坂口弘(京都大学医学部出身)は東洋医学に強い関心を持っており、日本に留学していたシュミット博士の招きで鍼灸を教えにドイツに赴きました。坂口は鍼灸を教えながら西洋医学とも東洋医学とも異なる独自の治療体系を持つホメオパシーを知りました。当時はちょうどハーネマン生誕二百年祭の頃でした。ホメオパシーは大学での研究対象にはなり得ないが、代替医療としてしっかりと根を下ろしていたのです。坂口は鍼灸を教えるかたわら、シュトゥットガルト病院でホメオパシーを学びこの経験をもとに帰国後「ホメオパシー治療」を著しました。しかし帰国後、坂口はほとんどホメオパシーで人を治療することはありませんでした。坂口が次のように言っています。「ホメオパシーを使わなかったのは、要するに必要がなかったということです」鍼灸、漢方などの東洋医学への誇りを感じさせる言葉です。しかし、一方で、ホメオパシーの真髄に触れていたかどうかの疑問が残ります。また、「ホメオパシー治療」という本も日本の医学に大きな影響を与えることはありませんでした。
その他、左近という女医がホメオパシー治療を行っていたという事実が残っています。
1975年に日本にエリザベス女王が来日する際、滞在先日本でのホメオパスの手配を外務省経由で要望されましたが日本人にはホメオパスの資格を持つものが見つからず、当時、在日外国人で、ホメオパス資格を持つものが、女王来日に対応したという興味深いエピソードもあります。
そして、1980年代からの世界的な代替医学への関心の高まりを受けて、日本人もホメオパシーを利用する人々が出てきましたが、海外からの情報ルートを持つごく一部の人によって使われているに過ぎませんでした。日本国内ではマスメディアにホメオパシーが紹介されることはなく、1990年代に一部の精神世界系の雑誌で不思議な治療法として取り上げられるに留まっていました。
このように1996年に私が日本で活動を始めるまで意図的とも思えるほどのホメオパシーに関する情報は日本に入ってきていませんでした。
1996年以降、日本におけるホメオパシーの奇跡とも呼ばれるほど、日本では急速にホメオパシーの導入、普及が進みました。 私は、もともと英国に在住してホメオパシークリニックを開業していましたが、1996年から、日本でのホメオパシーの健康相談と、ホメオパシーの講演会活動を始めたことがその端緒となり、それをきっかけに私は、ホメオパシーを真に日本に根付かせる為に必要不可欠である大きな柱となるものを矢継ぎ早に、一斉に開始しました。
ホメオパシーが早く、幅広く、深く日本に浸透するためにとった選択は、1つは、質の高いプロフェッショナル・ホメオパスを早期に多く育成する専門教育機関、そして職業団体・認定団体を早期に立ち上げること。もう1つが、より多くの日本国民にホメオパシーの素晴らしさを理解して頂き、セルフケアとして、多くの家庭でホメオパシーが実践されること、そのためにホームキットや安価で質の高いレメディーの供給体制を日本国内につくることでした。
日本のホメオパシーの仲間達と「日本にもホメオパシーの恩恵が授かりますように」と願いながら、人生を捧げ、ホメオパシーを普及し続けてきました。多くの海外のホメオパスの方々にも、たくさん助けて頂き、そのサポートには、いつも心からの感謝を持ちながら活動しています。
1996年にホメオパシーを導入して以来、日本全国を駆け回り、講演会、相談会、授業を続け、ホメオパシーへ関心を寄せる人々の数は急上昇し、私が学長を務める1997年に創立した日本初のプロフェッショナルホメオパシー養成カレッジ、ロイヤル・アカデミー・オブ・ホメオパシー(RAH:現在:カレッジ・オブ・ホリスティック・ホメオパシー:CHhom)の入学者は、年間100名を平均するようになり、日本でのホメパシーは益々盛り上がっていきました。
2010年に入り、日本政府は、ホメオパシーなどの世界各国の伝統医学の保険適用や資格制度化の統合医療プロジェクトチーム(PT)を発足させ、検討を開始しました。
PT会議に先立ち、2月26日、私は厚労相、統合医療PTに対しホメオパシーに関する280ページの資料を提出し、また3月19日にはPT担当者へ直接説明を行いました。そして、その翌日のTVでは、政府の統合医療PTで検討される16の療法の1つにホメオパシーが入ったことが報道されました。
私自身、この年は、1997年に創立したRAHを発展させ、新たにCHhomを開校し、ホメオパシーに限らず、臓器療法、ハーブ療法、花療法、生命組織塩療法を中心に、錬金術、医学占星学、薬草学、東洋医学なども取り入れ、また現代(西洋)医学との統合を目指したホメオパシー統合医療専門校としての教育を実践し、とうとうホメオパシーの時代到来と期待していた時でした。
日本でのホメオパシーバッシング
そんな矢先、同年夏、日本では大きなホメオパシーバッシングが起こりました。
日本の大手全国紙、朝日新聞東京本社・科学医療グループ・N記者から、私が会長を務める日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)に対して電話で次のような旨の取材依頼がありました。
「朝日新聞土曜版Be reportでホメオパシー特集の企画があり、今トレンドのホメオパシーについて、自分自身はよく知らないので詳しく教えてほしい」
ホメオパシーを紹介するための取材ということで受けることにし、6月17日にN記者が来社し、ホメオパシーの原理から、歴史、科学的根拠、世界情勢など幅広い質問に対し、真摯に回答しました。また、7月10日、N記者から以下の質問が届きました。
① 医学誌ランセットのホメオパシーに治療上の効果がないとする論文への見解
② 2010年2月、英国議会下院の科学技術委員会が、政府に対して保健医療での
ホメオパシーへの公費支出の停止などを勧告したことへの見解
期限内に上記に関する42ページの資料(ランセットの記事の信憑性に対する各界からの反論/英国下院の勧告は決定でなく、英国国会のコンセンサスがとれたものでないこと/英国国会が最も安全な代替医療であると認めた英国貴族院のホームページ/欧州各国でのホメオパシーの法的地位、保険適用等の状況など)を送りました。更に、7月28日、ホメオパシーを保険適用から外すべきとの英国下院の勧告を英国政府が却下したことを伝えましたが、なぜか印刷が始まっているので変更できないとの返答を受けました。
そして、7月31日、朝日新聞の「問われる真偽 ホメオパシー療法」「英国会は否定 NO」とタイトルのついた記事を読み愕然としました。誠意を尽くして用意した資料は何一つ役立てられておらず、私へのインタビューもほとんど使われず、事実と異なるホメオパシーの信用をなくすような記事だったからです。
この記者は、新聞記事には「インターネット上にホメオパシーによる「被害」の訴えは多い」と書きながらも、自分のブログには「具体的な「被害」の例がつかめず、記事がかけない。被害を受けた方は教えて下さい。」と直接募集する記事を掲載していました。私達が正しい情報を提供しても、朝日新聞は訂正記事も謝罪することも、またホメオパシーで発達障害(改善率90%)や自己免疫疾患などの難病が治癒している事実を公正に記事にすることもなく、それどころかその後、約6カ月にわたって執拗にホメオパシーバッシングを行いました。
この朝日新聞の一連の偏向記事によってホメオパシーの社会的信用は失墜し、多くのJPHMA会員が生活できなくなり涙を流す姿を見て朝日新聞を憎んだこともありましたが、多くの日本人がメディアの流す情報に疑いを持ち、真実を自分の目で見極めるようになったことは、逆に朝日新聞のお陰でもあります。
この一件があった際は、政府薬務課の指導を受ける機会にも恵まれ、様々な事を急速に変更させねばならず、非常に大変でしたが、JPHMAの私達が速やかに遵守した事で日本のホメオパシーは潰されることなく、守り続ける事ができました。
この論説を書いている2015年8月の時点では、日本で開校したプロフェッショナルホメオパス養成スクールRAHとCHhom卒業生が合計1,500人。JPHMA認定ホメオパス 600名、日本ホメオパシーセンター300ケ所。JPHMA認定アニマルホメオパス100名。少なく見積もっても20万人のホメオパシー利用者があると推定されています。
Zenホメオパシーとは
日本でホメオパシーを普及し、日本人にホメオパシー療法を施している内に、私は、Zenホメオパシーを発展させて行きました。Zenホメオパシーは、複数のレメディーを同時に出しますので、クラシカルホメオパシーの方々からは驚きの反応を受ける事がよくあります。
急速に発展するテクノロジーに伴い、変化の激しい環境の下、現代に生きる私達の病理は、近代、近世と比較し、確実に複雑化しています。
クラシカルホメオパシーも良いと思いますが、ZENホメオパシーで治療することでさらに治癒率が上がると思います。確かにケントの言うようにむやみやたらとレメディーを複数出すべきではないのですが、現代人にはなぜ複数のレメディーが要るのかをお伝えしたいと思います。
私は、全ホメオパスの師であるハーネマンによる『医術のオルガノン第六版』[2]、『慢性病論』[3]、『マテリア・メディカ・プーラ』[4]、『レッサーライティング』[5]を徹底的に読み込み、『医術のオルガノン第六版』の§279にハーネマンが以下の様に書いているように
“では、純粋な経験がどんな場合においても示すところによると、以下のとおりである。病気によって重要な内臓器官に明らかな損傷が生じていなければ(たとえその病気が慢性的で複雑化したものであっても)、さらに、治療の最中に種類の異なるあらゆる薬が患者から遠ざけられていさえすれば、重篤な(とりわけ慢性的な)病気の治療を始めたとき、ホメオパシーの治療薬として選ばれた高ポーテンシーのレメディーであれば、投与量がどんなに微量であっても、自然の病気よりも依然として強くないということは決してありえない。したがってどんなに微量でも、自然の病気を克服できないということ、少なくとも自然の病気の一部でさえ克服できないということはありえないし、自然の病気の一部だけでも生命原理の感覚から消し去って治療を開始するということができないということもありえないのである。”
つまり「医原病があっては、臓器が機能不足であっては、希釈振盪したレメディーは効かない」というハーネンマンの慢性病における治療法を現代人に合うようにアレンジし、更に成功したさまざまな臨床ケースから学び発展させて行き、10年かけてZenホメオパシーを編み出し、現代の複雑な病理にもホメオパシーで対応する事を可能にしました。
又、Zenホメオパシーを発展させていく中で、多くの方の難病の原因が、薬から来る医原病だけでなく、日本人がもつ「罪悪感」や「自己卑下感」などインナーチャイルドにも起因することにも気づきました。これについては、以下でより深く説明します。Zenホメオパシーは、発達障害や自己免疫疾患、癌、その他の身体的難病がホメオパシーのレメディー処方で治癒されると同様に、ホメオパスの言葉のレメディーを通して、インナーチャイルド(心の慢性病状態)を治癒しています。
Zenホメオパシーの優れた点は、レメディーとマザーティンクチャーをコンビネーションで使用することで疾患の大元である抗慢性マヤズムレメディーを使った慢性マヤズム治療(魂の治療)と疾患を作り出した慢性的な感情的ストレスに対応するレメディーによる治療(心の治療)と、疾患症状あるいは、その奥にある臓器の機能低下や機能不全の治療(体の治療)を同時にできる点です。医原病や食原病、環境病がある場合は、それらを解毒するためのレメディーも一緒に出します。
これがZenホメオパシーの中核をなす三次元処方(魂・心・体を三位一体で治療するホメオパシー処方)です。
慢性マヤズムに関して、200年前ハーネマンは「現代人の多くは一つの体に3つの自然な病気を(Psora、Sycosis、Syphilis)を持ってきてお互いが体の部位を取りあい、これら3つの病気の同等の強さの病気を起こしている」
オルガノン§40 ”三つ目の事例は、新しい病気が体に長期間影響をおよぼして結局は類似していない古い病気に加わって、複雑化した病気を形成する場合である。そうなった場合、どちらの病気も、体において自分の取り分となる部位、つまり、自分にとりわけ適した器官や、いわば本来自分のものとすべき場所を占拠する。ほかの場所は、類似していない病気に譲る。性病の患者が疥癬になることもあれば逆のこともある。しかし、この二つの互いに類似していない病気は互いに相手を取り除いて治療することができない。疥癬の発疹が現れはじめると、性病の症状は最初は鎮まり、進行を止める。しかし、そういうときでも(性病は少なくとも疥癬と同じくらい強いので)、どちらの病気もお互い一緒に現れて、要するに、体のなかで自分に適した部位だけを占拠する。そのために患者は病気が重くなり、治療も難しくなる。”と言っています。
難病を持つ現代人は‘3つの自然の病気(ソーラ、サイコーシス、シフィリス)’どころか医原病や食原病、環境病などの慢性病を自然の病気と共に持っていて病理が複雑化してしまっているのです。また現代人の多くは臓器の機能低下や機能不全があり、その原因の一つとして栄養のない食べ物から絶対的なミネラル不足を起こしていることがあります。ミネラルを補充するために物質的にミネラル豊富なマザーチンクチャー(φ)とそのミネラルの吸収率を高めるためのティッシュソルトレメディー(TSレメディー)をコンビネーションして使います。またφは臓器の機能低下や機能不全を物質的な力で直接的に改善するのに有効で、臓器サポートとして使います。このようにφやTSレメディーは臓器サポートにも一役かっています。
19世紀の偉大なホメオパス、ロバート・トーマス・クーパーが癌という深刻な疾患を治していたのは、ミネラルやビタミン豊富なマザーティンクチャーを使ったからでした(Arborivital Medicine)。プラスして現代人の必須ミネラル不足にはシュスラーのティッシュソルト(TS 12X)を使ってサポートします。現代人のミネラル不足の大きな原因として、化学肥料や農薬使用による土の生命力の低下による野菜のミネラル不足があります。
ZENホメオパシーの中核は魂・心・体の病気に同時にアプローチする三次元処方ですが、魂や心の病気にはホメオパシーだけでは限界があります。Zenホメオパシーの一翼を担うのは、魂や心の病気に直接的にアプローチするインナーチャイルド癒しです。
私たちは病気は魂・心・体のそれぞれにおいて存在し、それぞれの病気(慢性病)がどのようにして形成されるのかについて理解しなければなりません。
体の慢性病の多くは症状の抑圧から生じます。初期症状の多くは言わずと知れて老廃物や体毒の排泄です。うんこやおしっこなどの排泄を抑圧すると体がどうなるか容易に想像できるように、体の症状を抑圧するとやがて臓器の機能低下や機能不全を引き起こします。これが体の慢性病です。
この体の症状と同じ働きをするものが心にもあります。それが感情です。感情は心理的ストレス時に生じます。心理的ストレスは自分の思い通りにならないときに生じます。この自分の思い通りにならない状況において感情は、自分の思い通りにしようとする原動力(行動力)となります。つまり感情は心理的ストレスを軽減するためのもので、心の排出症状なのです。この感情を抑圧すると体の症状を抑圧して形成される医原病と同様、心の慢性病を作り出します。この心理的ストレスはもう一度浮上させて感情の解放をしない限り、存在し続けます。そして心と体を蝕んでいきます。この抑圧した感情や思い(心の慢性病)をインナーチャイルドといい、未解決な心の問題です。インナーチャイルドが多くあればあるほど、つまり抑圧した感情があればあるほど、免疫は低下し、医原病や食原病を発症しやすくなると同時に、それら慢性病が治癒しにくい原因となっています。
また、心理的ストレスは、学校、家族、社会によって元来すり込まれた「こうあるべき」価値観や道徳に縛られているから、生じるものです。ここに二つの例を挙げます:「優れている事が善」という価値観を持っている人は、試験で良い点が取れないとストレスを感じます。他の例では、「遅刻する事は悪」という道徳を持っている人は、約束に遅れる人に会うと、腹が立ちます。
この問題を根本的に解決するには、価値観や道徳を解放していく必要があります。この「こうあるべき」価値観や道徳は魂の病気と言えます。魂とは、生きる目的や願いを宿しています。それがあるから存在し続けることができるのです。そしてその生きる意志からさまざまな小さな目的や願い、善、価値観が生じます。もしその価値観が魂の価値観に沿わないものであったなら、魂を傷つけてしまいます。
私はマヤズムの本質は、本能化した不自然な価値観であると考えています。すなわち、慢性疥癬マヤズムは、「愛されることは善」という価値観と関係し、恐れの感情と強く関係しています。慢性淋病マヤズムは、「優れていることは善」という価値観と関係し、悲しみの感情と強く関係しています。慢性梅毒マヤズムは、「勝つことは善」という価値観と関係し、怒りの感情と強く関係しています。これらマヤズム的価値観から、さまざまな価値観が生じ、その価値観に囚われることで魂が病んでしまいます。
感情が生じる時、過去の抑圧した感情が戻ってきていると認識する事が重要です、ですので、過去の感情を解放する為に過去の出来事を思い出して下さい;それを解放する為、その信念を生じさせる価値観を見て、その価値観を形成したイベントを思い出して下さい。更に、自分自身を取り戻すために、魂の願いをみる事が重要となります。ホメオパスは、苦しみに共感してあげることで、抑圧した正直な思いや願いを解放するお手伝いができます。しかし、インナーチャイルドを癒すのは患者自身しかできません。自分の心の穴は、自分で自分のインナーチャイルドに寄り添い愛してあげることでしか小さくはならないからです。ただし、ホメオパスが患者を無条件に愛することで、患者自身がインナーチャイルドを愛する力を得ることができます。
今泣きたい悲しい子供が、「泣いてはいけない」という価値感/道徳を持っている事によって泣く事を止めることで慢性の悲しみ(インナーチャイルド)になって、少しのことで悲しくなるのです。慢性の悲しみをIgnやNat-mで根治することはできません。一過性の急性の悲しみを取ることはレメディーでできますが、それが慢性の悲しみ(インナーチャイルド)の場合、そのインナーチャイルドは、抑圧した感情や正直な思いを解放し、その悲しみのルーツである否定されたり愛されなかった出来事など、その価値観の背後にあるものを見つる必要があります。
インナーチャイルド癒しは、Zenホメオパシーの強い役割を果たしています。
私は、CHhom設立と同時にこの人生をよりよく生きるために、心の教育、霊性向上を与える「インナーチャイルド・セラピスト養成コース」を立ち上げました。人々が自分をゆるし、等身大の自分を愛し、真に生きるためになくてはならないコースです。
一方で魂を癒すためのホメオパシー的アプローチは、抗慢性マヤズム治療によります。
慢性疥癬マヤズムが立ち上がっている人には、有益ミネラル(Calc,Sulph,Sil,etc)すなわち抗疥癬マヤズムレメディーをティッシュソルトで出します。しかし淋病傾向が多く出ている人は抗淋病マヤズムレメディー(Nit-ac,Arg-nit,Plb,etc)などの毒の鉱物から出す必要があります。同じく梅毒傾向が多く出ている人は抗梅毒マヤズムレメディー(Merc,Aur-mur,Petr,etc)などの毒の鉱物のレメディーを出すようにします。
処方
Zenホメオパシー(三次元処方アプローチ)は、慢性マヤズム、疾患の原因となる感情的ストレス、疾患の症状を扱います。
もし医原病、食原病、環境病があるならば、これらの有害な影響を排出する為のレメディーが与えられると同時に、臓器サポー トレメディーも与えられ ます。
通常、朝、昼、晩に3種類のレメディーをLMポーテンシー、液体で処方します。
また、臓器サポートチンクチャー(マザーティンクチャーとホメオパシーレメディーのコンビネーション)を500mlの水に10~15滴入れて、一 日かけて少しずつ摂る様に処方します。摂るたびに、ボトルを叩くことをクライアントはアドバイスされます。
基本は
朝に抗疥癬レメディー(有益ミネラルレメディー)
昼または夕方に慢性マヤズムレメディーノゾーズ(かかりやすさの軽減)
夜に今出ている症状のレメディー(植物、動物のレメディーが多い)
このように心と魂の癒しを同時に多角的にアプローチしなければ、治癒に結びつかないという現状に対し、Zenホメオパシーは、現代のホメオパス達にとって福音である事を願います。
現代医学では「不治」と言われた難治の病に苦しむ多くのクライアントの方々が、Zenホメオパシーである、三次元処方とホメオパスから発せられる愛情深い言葉のレメディー(インナーチャイルド癒し)によって治癒して行きました。
難病で苦しむ患者のためにZenホメオパシーの恩恵が、より多くの方々へ行き渡る事を、私は願っています。
参照文献リスト
[1] Ōno Yasumaro: The Kojiki “Records of Ancient Matters”:Japan 712; English translation published September 15th 2005 by Tuttle Publishing, North Clarendon (VT)
[2] Hahnemann S: Organon der Heilkunst 6. Auflage (Organon the 6th edition): 1833; reprinted. New Delhi, India: B. Jain Publishrs; 1990
[3] Hahnemann S: Die Chronischen Krankheiten 2. Auflage (Chronic Diseases): 1835 – 1839; reprented New Delhi, India: B. Jain Publishers; 2005
[4] Hahnemann S: Reine Arzneimittellehre (Materia Medica Pura): 1811 – 1833; translation by R. E. Dudgeon, 1880, Indian reprint, B. Jain, Delhi, 1990
[5] Hahnemann S: The lesser writings of Samuel Hahnemann Collected & tr. by R.E. Dudgeon: 1851; reprinted. New Delhi, India; B. Jain Publishers; 2007
【LINKS(リンク ス)について】
ドイツ最大の医科学専門出版社であるティーメ出版(Thieme Verlag)が発行するピア・レビュー誌(査読審査のあるジャーナル)であり、 1987年設立以来、代替医学会で重要で高い評価を受けているホメオパシージャーナルです。
現在、50か国以上のホメオパスをつなげ、ホメオパシーや自然療法、哲学に関する情報交換、情報共有を促進しています。
編集委員会は経験豊富な、ホメオパシーに捧げているホメオパスで構成されています。
査読、選択された論説は、治療、哲学、歴史といった様々なトピックがバランスよく網羅されています。
*この論文の見出し部分は、2008年8月に、由井会長が執筆したHpathyへの論文からの出典となります。
<Hpathy論文オリジナル>
関連ホメオパシー新聞リンク
▼「朝日「ホメオパシー批判」の無法取材」 『 月刊WiLL 』3月号にJPHMA由井寅子会長の文章が掲載されました!
▼ホメオパシー新聞 ホメオパシーでは死んでいない!
▼日本学術会議金澤会長「ホメオパシー談話」について