ページの先頭です
ページ内を移動するリンクです
カテゴリーメニュー
本文
カテゴリー別メニュー

ホメオパシー三原則に関する真実

2013.04.05

古典派ホメオパシーにおいては、以下のホメオパシー三原則が掲げられています。

ホメオパシー三原則

  1. 1.同種の法則
    同種の法則に基づいた処方をする。すなわち、クライアントが示す症状の全体像とレメディーが示す症状の全体像をマッチさせる。
  2. 2.単一レメディーの原則
    1人の人の症状の全体像は1つであるので、その全体を一元的に包括する1つのレメディーを処方する。一度に処方されるレメディーは1種類であり、コンビネーションで処方されるものではない。
  3. 3.最小投与の原則
    レメディーの投与は必要最小限に留める。単一レメディーを1粒とって長期間(1か月ほど)待つ

ハーネマンを研究した結果、正しくは、以下になります。

  1. 1.同種の法則
    症状が明確である急性病においては、クライアントが示す全体症状にできるだけ合うレメディーを処方する。ただし、慢性病においては、症状の全体像に合うレメディーを処方するのではなく、根底にある慢性マヤズム治療のためのレメディーを処方する。そして同時に、医原病がある場合には医原病に対応するレメディーを処方し、臓器や組織などの体レベルで病気があるときは、臓器や組織に対応した治療を行う。慢性病においては、慢性マヤズムを含め少なくとも病気は2つ以上同時に存在し、それゆえに患者が示す症状の全体像を1つのレメディーに還元することはできない。
  2. 2.単一レメディーの原則
    病気が1種類である急性病においては、患者の症状の全体像にできるだけ合うレメディーを1種類処方する。ただし、慢性病においては、2種類以上の病気が同時に存在する以上、この原則は当てはまらない。
  3. 3.最小投与の原則
    この原則は『医術のオルガノン第五版』以降、ハーネマン自身によって明確に否定されている。この原則は『医術のオルガノン第四版』の英語版をもとに解釈したケントの原則である。ハーネマンは、LMポーテンシーで頻繁にリピートすることを原則としている。

古典派ホメオパシーが掲げる「ホメオパシー三原則とその解釈」は、世界の90%のホメオパシーで標準となっています。
しかし、これは正しくありません。 治療においては患者が主役です。
患者が満足し、治癒に導かれること、そして、患者の心身に悪影響を与えない安全な治療法であることが重要です。

同時に治療法のメソッド(方法論)についても同じことが言えます。
同じ治療法でもそれをどう使うか(メソッドの違い)によって治癒の成果は全く異なるものとなります。メソッドが実際の経験よりも「こうであらなければならない」という原則が優先されるようなことがあってはなりません。

『医術のオルガノン第六版』§2でハーネマンが述べているように、治療家の本分は、最も短期間で、最も確実に、最も負担なしに、心身のすべてにわたって病気を除去し根絶することです。
ハーネマン自身実践主義、経験主義の人であり、常によりよい方法を模索し『医術のオルガノン』も第六版まで改訂し、また、実践編となる慢性病を治すための『慢性病論』を出版し、こちらも改訂しました。

したがってもし原則を振りかざし療法家に縛りを入れるのであれば、それが他の方法より確実に優れていることが経験から証明されなければなりません。
実践してみることもなく原則が優先されることがあってはなりません。
原則を絶対視することは、ホメオパシーをドグマ化することであり、ホメオパシーから可能性を奪いホメオパシーの発展を停止させることになります。
そして、ハーネマンの精神を否定することでもあります。

実際、この三原則のドグマ化によってホメオパシーから可能性が奪われ、現在の世界的なホメオパシーの閉塞状況を作り出している大きな原因になっているように思います。

それではホメオパシー三原則について何が真実かを個々に見ていきましょう。

「1.同種の法則
同種の法則に基づいた処方をする。すなわち、クライアントが示す症状の全体像とレメディーが示す症状の全体像をマッチさせる」と言いますが、

人は魂・心・体の三位一体の存在です。
病気も魂・心・体のレベルで存在します。
ですから治療法も魂・心・体のそれぞれのレベルで行う必要があります。
臓器や組織自体に機能低下や機能障害があれば、その部分に対する治療が必要になります。異物や毒素が体内に入っているならば直接に臓器や組織に損傷を与えますから、その毒出しが必要になります。

このように体レベルで病気が存在する時、部分に対する治療も必要になります。そして体の病気には物質的な力が必要になります。
たとえば、臓器療法(マザーチンクチャーや低ポーテンシーのレメディーによる臓器サポート療法)が必要となったりします。

『医術のオルガノン第六版』 §279
では、純粋な経験がどんな場合においても示すところによると、以下のとおりである。病気によって重要な内臓器官に明らかな損傷が生じていなければ(たとえその病気が慢性的で複雑化したものであっても)、さらに、治療の最中に種類の異なるあらゆる薬が患者から遠ざけられていさえすれば、重篤な(とりわけ慢性的な)病気の治療を始めたとき、ホメオパシーの治療薬として選ばれた高ポテンシーのレメディーであれば、投与量がどんなに微量であっても、自然の病気よりも依然として強くないということは決してありえない。したがってどんなに微量でも、自然の病気を克服できないということ、少なくとも自然の病気の一部でさえ克服できないということはありえないし、自然の病気の一部だけでも生命原理の感覚から消し去って治療を開始することができないということもありえないのである。

この§279には、内臓器官に明らかな損傷が生じていなければ、そしてどんな薬も投与されていなければ、高ポーテンシーのレメディーで治癒すると書かれています。
逆に言えば、内臓器官に損傷があったり、薬がなにかしら投与されていたら、高ポーテンシーのレメディーだけでは治癒しない(治癒するとは限らない)ということです。
臓器に対応した治療や医原病に対応した治療が別に必要になるということです。

病気のかかりやすさ(魂レベル)の病気にはマヤズム治療は不可欠でしょう。 病気が一元的なものでもなく、さらにそれぞれのレベルで1種類でもない以上、単純に同種の法則に基づき全体症状を合わせる処方をすればよいというものではありません。
ハーネマンは『慢性病論』にて慢性病においては同種の法則よりも、抗マヤズムレメディーを優先して処方することの重要性を述べています。

また、『医術のオルガノン第六版』の§205に書かれているように、ハーネマンは慢性病においては最同種のレメディーを処方するのではなく、症状の根底にある三大マヤズムだけ治療するようにと言っています。

オルガノン第6版 §205
ホメオパスは、局部的な処置(外部からダイナミックに作用する薬の使用や外科的な処置)によって、この一次的な症状を治療しない。また、この症状が進展して発症した二次的な症状も治療しない。むしろホメオパスは、一次的な症状にせよ二次的な症状にせよ、それが現れたときには、症状の根底にある三大マヤズムだけを治療するのである。そうすれば(ただし長期化したサイコーシスのいくつかの症例を除く)一次的な症状も二次的な症状も一緒に消えるからである。しかしこのような現象を、ホメオパスはもはや目にすることがない。残念ながら、一次的な症状が、これまでの医師たちによってすでに外部から取り除かれてしまっているからである。それゆえホメオパスは、今日では二次的な症状とだけ、すなわち、内に宿るこれらマヤズムが発現し進展したことから生じた症状とだけかかわることになる。私が自分で、一人の医師として長年にわたり熟考し、観察し、経験したうえで明らかにすることができたかぎりではあるけれども、この病気の内的な治療を、自著『慢性病論』で示すことに努めた。ここではそれを参照してもらいたい。

結論:
1.同種の法則に関する真実
症状が明確である急性病においては、クライアントが示す全体症状にできるだけ合うレメディーを処方する。
ただし、慢性病においては、症状の全体像に合うレメディーを処方するのではなく、根底にある慢性マヤズムの治療のためのレメディーを処方する。
そして同時に、医原病がある場合には医原病に対応するレメディーを処方し、臓器や組織などの体レベルで病気があるときは、臓器や組織に対応した治療を行う。
慢性病においては、慢性マヤズムを含め少なくとも病気は2つ以上同時に存在し、それゆえに患者が示す症状の全体像を1つのレメディーに還元することはできない。

「2.単一レメディーの原則
1人の人の症状の全体像は1つであるので、その全体を一元的に包括する1つのレメディーを処方する。一度に処方されるレメディーは一種類であり、コンビネーションで処方されるものではない」と言いますが、

単一レメディーの原則というのは、『医術のオルガノン』の原書を350回以上読んだハーネマン研究の第一人者であるストットラー氏が明らかにしたように、1つの病気には1つのレメディーをとるという原則であり、現代の人は1人の人が複数の病気をもっていることが多くなっており、1人の人の病気を1つのレメディーに還元できるものではありません。

そもそも病気の根本とは何かと言ったら、不自然な考え方(価値観)にあります。生命というものは自然な生きる目的とともにあり、不自然な考え(価値観)は、直接的に生命の流れ(バイタルフォース)を歪めてしまうのです。
そしてそれが病気の本質なのです。そして人は不自然な価値観を同時にたくさんもっているものなのです。
そういう意味で本来人は多くの病気を同時にもっているものなのです。ただし体に現れている症状は、1つの大きくこだわっている価値観(病気)に還元できることが多いのは事実でしょう。
そういう意味で症状の全体像を単一レメディーに還元できることはあり得ることです。

しかし、現代病というものは、予防接種や薬剤、農薬、不自然な食品添加物などによって強制的に複数の物質レベルの病気が埋め込まれたり、症状の抑圧により病気が複数存在したり(症状が抑圧された場合、病気は体内に存在し続けます。ですから、症状を抑圧しただけ病気の数が存在することになります)、それらが融合したり、マヤズムが立ち上がったりなど病気の複雑化が進行していることがほとんどで、単純に症状の全体像を1つのレメディーに還元できるという状況にはありません。
さらに前述したとおり、病気は魂・心・体のそれぞれのレベルで存在し、臓器の機能低下や機能障害があれば、それは体レベルで病気が存在することになります。

このように、一人の人間は多くの種類の病気をそれぞれのレベルで同時にもっています。「全体を一元的に包括する1つのレメディーを処方する」ということ自体、非実現的、非実際的な机上の空論でしかありません。

患者の複雑化した病気(慢性病)を1つのレメディーでカバーすることが不可能に近いことは、ハーネマン自身が『慢性病論第二版」でも明記しています。
一度にとるレメディーは1種類であっても、1種類で治癒することはまずありません。
一度にとるレメディーと一度に処方されるレメディーはイコールではない、ということです。

『医術のオルガノン第六版』§35〜51は同じ体(患者)に生じた2つの類似していない病気について書かれていますが、1人の患者に複数の異なる病気が生じることを明確に述べています。
したがって、類似していない複数の病気が1人の患者に生じる場合、症状の全体像とは複数の病気が同居する二元的、三元的なものということになります。
この場合、全体像に合うレメディーをとろうとするなら、必然2つあるいは3つのレメディーを同時にとらなければならないということになります。
実際、病気が融合していると思われる場合には、由井寅子氏の経験上、2つあるいは3つのレメディーを同時にとってはじめて治癒に導かれるケースが多々あるのです。

§40
=新しい病気が体に長期間影響を及ぼして、結局は類似していない古い病気に加わって複雑化した病気を形成する場合である。そうなった場合、どちらの病気も体において、自分の取り分となる部位、つまり、自分にとりわけ適した器官や、本来自分のものとすべき場所を選挙する。ほかの場所は類似していない病気に譲る。性病の患者が疥癬になることもあれば逆のこともある。=
『医術のオルガノン』(ホメオパシー出版)

実際、ハーネマンの主著である『慢性病論第二版』やハーネマンの実際の処方が書かれた『診療日誌(ケースブック)』には、2つのレメディーを同時、または交互に使用して治療している記述があります。

1つのレメディーでは慢性病は治せないということをハーネマンは『慢性病論第二版』(ホメオパシー出版)の以下のパートで書いています。

ソーラに対するレメディーがたった一つだけで治癒する可能性はきわめて稀である、ということだ。さらに言えば、むしろこうしたレメディーをいくつか使うことが必要であり、最悪の症例となると、完治させるためには徐々にたくさんのレメディーを使う必要がある。
『慢性病論第二版』173P

ソーラ全体とその発現したあらゆる状態を治療するためには、たった一個の、唯一のレメディーだけでは十分でない。むしろそのためには、ソーラに対するレメディーをいくつか必要とする。
『慢性病論第二版』174P

すべての患者は、やはりペストのような同一の熱病を発症させる、これらのすべてあるいは多くの患者がことごとく一緒にこうむった症状によって、その期間に猛威を振るったチフスの全体像が過不足なく描き出される。これに対してホメオパシーの方法で見つけられた一つのレメディー、あるいは二つ一組のレメディー(1)によってチフスは完全に治療される。
(1)1813年のチフスではブライオニアとラストックスがすべての患者にとって特効薬だった。
『慢性病論第二版』P27

私はソーラの根源をホメオパシーで根絶させることによって長期にわたる病気や重疾患を治療する方法を知って以来、次のことがわかったのである。すなわち、流行病のように人びとの間に広まる間欠熱は、特徴と症状に関してほとんど毎年異なって現れ、それゆえほとんど毎年、別の異なったレメディーを特効薬として使うことによってそのような間欠熱を治療することができるのである、と。たとえば、ある年にはアーセニカム、別の年にはベラドーナ、あるいはアンチモニウム・クルーダム、マチン、アコナイトを使った。イペカックと交互的にナックスボミカを使うこともあった。塩化アンモニア、ネイチュミュア、オピウム、キナの実を単独で使ったり、カプシカムと交互的に使ったり、あるいはカプシカムを単独で使うこともあった。メニアンセス、カルカーブ、ポースティーラ、二つの炭素[木炭と獣炭]のうちの一つ、アーニカ、これらを単独で、またはイペカックと交互的に使ったこともある、など。
『慢性病論第二版』P218

さらに、慢性病において、全体症状を一元的に捉えて治療することの無力さを以下のとおり『慢性病論第二版』の中に明確に述べています。

これまでプルービングされたレメディーを使い、ホメオパシーとして最善の方法で、性病以外の慢性病を治療しているのに、何度その病気を取り除いても再発した。しかも、そのときどきによって程度の差こそあれ、いつも現れ方を変えながら、新しい症状を伴い、それどころか症状の数を毎年増やしながら再発した、という事実である。このことから次のことが明らかになった。すなわち、この種の慢性病のとき、いや、(性病以外の)どんな慢性病であっても、ホメオパシーの医師は、まさしく目の前に現れている病的現象にかかわっているだけではない。その病的現象は、それ自体で完結した一つの病気とみなして治療してはならない。―もしそういう病気であるなら、通常、ホメオパシーによって短期間で永遠に根絶され、治療されたにちがいないであろう。ところが実際は、治療した経験と結果から否定されるとおりである。むしろ、ホメオパシーの医師がかかわっているのは、深いところに存在している根源的な病気から分離した一部にほかならない。根源的な病気の大部分は、刻一刻と現れてくる病的現象に示されるであろう。だからホメオパシーの医師は、この種の個々の症例に関して、それがそれ自体で存立し完結した病気であるという従来どおりの前提で、持続的に治療できると考えてはならない
『慢性病論第二版』P23

一般的に言って、それ以外のソーラの状態はどれも、内部でまだ休眠しているソーラであろうと、無数の慢性病の一つに進行したソーラであろうと、ソーラに対するレメディーがたった一つだけで治癒する可能性はきわめてまれである、ということだ。さらに言えば、むしろこうしたレメディーをいくつか使うことが必要であり、最悪の症例となると、完治させるためには徐々にたくさんのレメディーを使う必要がある。
『慢性病論第二版』P173

ソーラ全体とその発現したあらゆる状態を治療するためには、たった一個の唯一のレメディーだけでは十分でない。むしろそのためには、ソーラに対するレメディーをいくつか必要とする。
『慢性病論第二版』P174

単一のレメディーに関しては、由井寅子氏による『医術のオルガノン第六版』の「解説(前編)」や『慢性病論」第二版』の「日本語版監修者まえがき」にも詳しく書かれています。
従来の方法では歯がたたなかった発達障害や自己免疫疾患などの難病が、由井寅子氏が完成させた「Zen(禅)ホメオパシー(三次元メソッド)」(複数、コンビネーション、LM(液体)ポーテンシー使用)で劇的に改善していく様子を見て、また、従来の方法で長年治癒に導かれなかった患者が短期間で改善していくケースをみて、この事実をしっかり公開していくこと、周知にしていくことこそが、病気に苦しむ多くの方のニーズにも応え、さらに、日本でもホメオパシー自体が21世紀の統合医療の中心となっていくことにつながると考えます。

レメディーを1粒しかとってはならない、1粒とったら長期間待ちリピートしてはならない、と束縛し、また、コンビネーションレメディーを用いてはならないと束縛し、治癒の可能性を摘み取っていることは大きな問題であると考えます。
タイラー・ケントは『医術のオルガノン』の内容が大きく変わる第五版以前の第四版(英語版)をもとに『オルガノン』を観念的に解釈し解説してしまったために、ハーネマンのホメオパシーから離れたケントの解釈によるホメオパシー、すなわちクラシカルホメオパシーというものが誕生してしまいました。

また意図的か偶然かわかりませんが、誤訳の多い英訳の『オルガノン』を参考にするのではなく、古典ドイツ語で書かれた原書に基づいて研究することが大事です。
この点、『医術のオルガノン第六版』、『慢性病論第二版』、『純粋マテリア・メディカ』、『慢性病マテリア・メディカ』、『レサーライティング【小論集】』などハーネマンの著作を由井寅子氏の呼びかけで原書から忠実に日本語に翻訳したことの意義は、真のホメオパシー医学を復活させるうえでも本当に大きなものであったと考えます。

今や世界から注目される由井寅子氏の提唱する日本の「Zen(禅)ホメオパシー」ですが、この完成も上記の地道なハーネマン研究の上にあるのです。
また、たとえ「ホメオパシーの三原則とその古典的解釈」が正しいと仮定したとしても、大本のマテリア・メディカの知識やレパートリーの知識が間違ったものであれば、三原則の適用が根本的な部分で破綻してしまいます。

実際、ハーネマン以後の後世の方がいろいろなマテリア・メディカを編纂しましたが、その多くに間違いが認められています。
もちろんその間違ったマテリア・メディカをもとにして作られたレパートリーも必然多くの間違いが認められています。
ハーネマン研究の第一人者の1人であるオーストラリアのホメオパス、ジョージ・ディミトリアディス氏は、タイラー・ケントのレパートリーがあまりに誤謬に満ちているので、ハーネマンが信頼できるレパートリーとして認めたボーニングハウゼンのレパートリーの研究を15年かけて行い、『TBR改訂版』を完成させたという経緯があります。JPHMAが認定するCHhom(シーエイチホム)ではこの『TBR改訂版』の日本語版がレパートリーの標準テキストとして使われています。
さらに、『TBR』の大本である、ハーネマンの『純粋マテリア・メディカ』や『慢性病マテリア・メディカ』を完全日本語訳し、マテリア・メディカの標準テキストとして使用されています。

上記にあげた原則のどこが間違っているのかは『ホメオパシックジャーナル第50号』の会長巻頭言でも触れていますので以下に紹介します。

「ハーネマンはその人を治せと言っていません。ハーネマンはその人の病気を治せと言っています。ハーネマンは1つの病気に1つのレメディーと言ったのであり、一人の人間に1つのレメディーといったのではありません。現代人は複数の病気をかかえている人が多く、それゆえ同時に複数のレメディーが必要されている時代と言えます。それでだけではなく、関係性の強いレメディー同士をコンビネーションにすることで相乗効果が得られるのです」 「ハーネマンがチフスの治療に、ブライオニア(Bry.)とラストックス(Rhus-t.)をペアで出しなさいと書いてあります。ペアとは何か? 「一緒に」です。君と君がペアになってやれ。ペアという意味は「交互に使え」」ではありません。ペアと書いているわけです。また、エギディ事件とうのがあります。283種類のコンビネーションを使ったイタリアのホメオパスが、ハーネマンに手紙を送りました。全部コンビネーションです。全部よく効いたというケースにハーネマンは、「あなたは素晴らしい実験をしている。今度のオルガノンにいれましょう!」と言う返事を書いています。しかし「ハーネマンがアロパシーの医師に薬をあれこれ混ぜてとることを禁じているのに、あなたが混ぜて使うことで言っていることに一貫性がなくなるし、アロパシー医師に悪用される原因になり混乱する」とばかり、コンビネーションを認める記述をオルガノンに載せることに強固に反対する弟子がいて、結局政治的理由で掲載が中止され、オルガノンに載ることはなかったわけです。この事件はハーネマンの書簡を読めば事実であることは明らかです。ハーネマンはエギディを認めていたのです)」

ここで、レメディー併用によって治癒した233のケースとともに、レメディー併用の成功をハーネマンに報告した、デュッセルドルフのエギディ博士にあてたハーネマンの1833年5月15日の書面回答を紹介します。

「親愛なる友にして同僚へ!

――私が偏見から、あるいはそれが私の学説に変更を引き起こすことになるかもしれないからといってよいものをあえて拒絶するとは一瞬でも思わないでほしい。君も同じだと思うが、私はただ真実を欲しているのだ。だから君がそのような幸運なアイデアとめぐり合ったことをうれしく思うし、君がそれを必要なときに限って使ってきたことをうれしく思う。両方のレメディーが、おのおの別の側面から、ホメオパシー的に適切であると思われるケースにおいてのみ2つの薬剤は(最低限の投与で、または嗅覚によって)一緒に与えるべきである。そのような状況下においては、その処置がわれわれの技術とあまりにも一致しているので、あえてそれに反対するものは何もない。それどころか、ホメオパシーは君の発見に祝辞を表するべきなのだ。私自身、機会があり次第、それを実践に移そうと思う。そして、それがよい結果となることに一瞬たりとも疑いはない。ボーニングハウゼンが全くわれわれと同じ意見で、また、そのように行動していることもうれしいことだ。私も両方のレメディーは同時に与えられるべきだと思う。ちょうど、患者にHepar SulphをとらせるかかがせるかするときにSulpherとCalcareaを一緒にとるように、または患者がCinnabarをとったりかいだりするときSulphurとMercuryを一緒にとるように。それで、私が君の発見を間もなく発行される『オルガノン』の第5版に記して世の中に知らしめるのを許してほしい。しかしそのときまでお願いだからそれを君の胸にしまっておいてほしい。また私が大いに尊敬するヤール氏にも同じようにしてくれるよう頼んでほしい。私は、同時にそこで、軽率に選んだ2つのレメディーを組み合わせて使う処方の乱用すべてに対して抗議し、また真剣に警告するつもりだ。君からの便りを楽しみにしている。

敬具

サミュエル・ハーネマン

ハーネマンからエギディ博士にあてた1833年6月19日付の別の手紙を読んでみよう。

――私は君の発見である2つのレメディーの投与について『オルガノン』の第5版に特別な段落を設けた。昨日の夕方、アーノルドにその原稿を送って、それをすぐに印刷し、口絵として私の肖像の鋼版画を載せるよう命じた。優先権競争が心配だ。30年前、私は優先権を争うには弱すぎた。だが長い年月を経て、いま、私にとって重要なのは、私を通してだろうが、他人を通してだろうが、世の中が最良のもの、最有益な真実を手にすべきことだ」

『ホメオパシー・ルネサンス』(ホメオパシー出版)より引用

これを読むと明らかなようにハーネマンはコンビネーション投与を肯定していました。しかし、政治的な理由により『医術のオルガノン』への掲載が取り止めとなってしまったのです。その経緯の詳細については『ホメオパシー・ルネサンス』をお読みください。

結論:
2.単一レメディーの原則の真実
病気が1種類である急性病においては、患者の症状の全体像にできるだけ合うレメディーを1種類処方する。
ただし、慢性病においては、2種類以上の病気が同時に存在する以上、この原則は当てはまらない。

「3.最小投与の原則
レメディーの投与は必要最小限に留める。単一レメディーを1粒とって長期間(1か月ほど)待つ」と言いますが、

次に最初投与の原則について見ていきます。
多くのホメオパスはレメディーをリピートしてはならないと思っていますが、これは明らかに間違いです。治癒を促し促進するためにはリピートは不可欠と言ってもよいほどです。それは経験から明らかです。
経験よりも原則が正しいということはありません。原則は経験によって導かれるものです。経験よりも原則が優先されることがあればそれはドグマとなり、真実を覆い隠すことになります。『医術のオルガノン第六版』から引用します。

§246
治療の際、回復が著しく進んで改善が際立って認められるなら、そのときのすべての状態は、改善が止まらない限り、レメディーを繰り返し使ってはならないことを意味する。なぜなら、この良好な状態はすべて、服用したレメディーの効果によって継続的に生みだされているものであり、仕上げに向かってまっすぐ進んでいるからである。(●ここまで第一版で書かれた)こういうことは急性病では珍しくはない。(●ここは第六版で書かれた)これに対して、いくぶん慢性的な病気の場合はどうであろうか。確かに、ときには適切に選ばれたホメオパシーのレメディーを一度投与するだけで、ゆっくり改善が進んで治療を終えることがある。このようなときレメディーは、みずからの自然本性に従って、四〇日、五〇日、六〇日、一〇〇日の期間をかけて治療を成し遂げることができるからである。しかし、こういうことはきわめてまれである。さらにいえば、患者にとってだけでなく医師にとっても、できることなら治療期間を半分に、四分の一に、いやそれどころかもっと短く、いっそう速やかに治療できるようにすることが、非常に重要であるにちがいない。(●ここまで第五版で書かれた)
『医術のオルガノン第六版』

この§246からわかるように、「単一レメディーを1粒とって長期間(1か月ほど)待つ」という方法は、『オルガノン』の初版が書かれた、原物質を含む低ポーテンシーのレメディーを使っていたころのやり方であり、少なくとも第五版が書かれたころには、そのようなやり方で治るのは急性病ぐらいで、慢性病では「きわめてまれである」とはっきり断言しています。

つまり、「単一レメディーを1粒とって長期間(1か月ほど)待つ」という方法は、ハーネマン存命中にすでにハーネマン自身によって克服された文字通り古い方法であり、それを現代の私たちが金科玉条のごとく奉り、慢性病にも適用しようとすることは正しい方法とは言えないのです。
このような方法で慢性病を治療しても治ることはほとんどなく、仮に治ったとしてもとても時間がかかり実際的でなく、患者を無駄に長期間苦しみの中に放置することになります。
そして、§248に書かれているように液体フォーム(LMポーテンシー)のレメディー(その都度叩いて活性化させる)を頻繁にリピートすることで治癒までの期間を著しく短縮できるとしているのです。

ハーネマンはレメディーを頻繁にリピートすることを推奨しているのです。また、ハーネマンは確かに液体フォームでのみリピートすることを推奨しましたが、多くのホメオパスが液体フォームでなくても現代の慢性病においてはリピートすることで治癒が加速すること、またリピートなしでは治癒していかないという経験をしています。
つまり、液体フォームであろうが固体フォームであろうが現代においてレメディーのリピートは重要であると考えています。
もちろん、日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)としては、処方においてはLMポーテンシー(液体フォーム)を推奨しています。
それがハーネマンの言うとおりベストであることは、私たちの経験からも実証されているからです。

§248
そのためにレメディーの溶液(1)は、服用するたびに前もって(およそ八回、一〇回、一二回、瓶を振盪して)新たに活性化し、コーヒーやお茶を飲むのに使う小さじの一杯分から(増やして)数杯分を患者に飲ませる。病気を長く患っているときには毎日か一日おきに与える。急性病のときには六時間ごと、四時間ごと、三時間ごと、二時間ごとに与える。きわめて緊急のときには一時間ごと、あるいはもっと頻繁に与える。だから慢性病のときには、正しくホメオパシーの治療薬として選ばれたレメディーはどれも、作用の持続期間が長いものであっても、数か月の間に毎日繰り返し服用することも可能であり、その効果も高まる。
『医術のオルガノン第六版』

結論:
3.最小投与の原則の真実
この原則は『医術のオルガノン第五版』以降、ハーネマン自身によって明確に否定されている。この原則は『医術のオルガノン第四版』の英語版をもとに解釈したケントの原則である。
ハーネマンは、LMポーテンシーで頻繁にリピートすることを原則としている。

まとめ
以上のホメオパシー三原則に関する真実は、ハーネマンの『医術のオルガノン第六版』および『慢性病論第二版』をしっかり読むことで自ずとわかるはずです。ただし、ホメオパシー三原則のドグマに強くとらわれている場合は、一旦その信念を外し客観的に読まなければ、真実は見えてこないかもしれません。
国内外のホメオパスたちが、もう一度、ハーネマンの原点に返り『医術のオルガノン第六版』、『慢性病論第二版』をしっかり読むならば、そしてハーネマン研究の第一人者であるカナダのルドルフ・バースパー氏の『ホメオパシー・ルネサンス』を読むならば、ホメオパシーの三原則は絶対的なものでないことが理解できるでしょう。
そして束縛を離れ、患者を治癒に導くことを第一に考えよりよい方法を求めて試行錯誤するならば、ハーネマンが最晩年にLMメソッドを確立したように、そして由井寅子氏が現代の難病にも通用する「Zenメソッド(三次元処方)」を確立したように、ホメオパシーから可能性を引き出すことができるのです。

ホメオパシーによって難病患者が治癒に導かれるようになったら、世界のホメオパシーが再び大きく発展することは間違いないでしょう。
そして多くの人々がこのすばらしいホメオパシー療法の恩恵に与ることになるでしょう。
人間の弱さは、忍耐強く理解しようと努めることができないところにあると思います。しかし人の命を預かるホメオパスは、理解する努力とそれを実践し、体験することで智恵にしていくことがとても大切なこととなります。

前述したとおり、ワクチンや薬剤などの症状の抑圧による医原病や不自然な食品添加物や農薬などによる食原病、さらに向精神薬や感情の抑圧による免疫低下が急速に拡大している中、古典的解釈に基づくホメオパシー三原則をドクマ化し、後に勝手につくりだされた規制にとらわれていたのでは、ホメオパシー療法自体が、あまり効かない、難病に太刀打ちできない中途半端なものとなってしまうおそれがあります。

実際、多くの国でこのことは深刻な問題になってきていると感じています。
ケント(1849〜1916)のクラシカルホメオパシーが誕生して100年以来、ケントのホメオパシーだけがなぜか世界的に強力に推進されてきました。
誰かが意図的にハーネマンの教えを誤解させ、ホメオパシーによる治癒率を下げようとしているのではないかと疑いたくなってしまうほどです。
なぜなら、ケントと同時代を生きたイギリスのバーネット(1840〜1901年)などのグループは、ホメオパシー古典派の三原則にとらわれないクリニカルホメオパシー(=プラクティカルホメオパシー)を発展させ、難しい患者を短期間にどんどん治癒に導いていたからです。なぜこの実際に治癒に導く、ハーネマンの教えに基づく実践的なホメオパシーが推進されなかったのか不思議でなりません。

発達障害、自己免疫疾患、様々な医原病、食原病など、またいくつもの病気を体内にもってしまった現代人に1つのレメディーだけで対処しようとしたり、深いマヤズム治療に関する知識なしに対処しようとすることが、まさに古典的であることに早く世界のホメオパシー関係者が気づかなければなりません。
ハーネマンが実践において最終的に指標としていたホメオパシーの真の原則を知り、ケントのホメオパシーではなくハーネマンのホメオパシーに立ち返ることが、世界のホメオパシーの新たな夜明けにつながることになると考えています。

Sangensoku_img