小谷 宗司(こたに そうじ)
Soji Kotani

昭和52年 東京薬科大学卒業。同年医薬品メーカー入社。
平成15年取締役製造部長を経て退職し、ライフワーク達成のためのNPOを立ち上げる。
長野県薬草指導員、長野県薬草生産振興副組合長、 信濃生薬研究会会員、日本生薬学会会員、日本薬史学会会員。
He graduated from Tokyo University of Pharmacy and Life Science in 1977.
He was employed by a medicine maker and resigned to set up the NPO Natural Science Institute to achieve his life work in 2003.
An instructor of Nagano medicinal herbs, Vice union president of Nagano medicinal herbs production promotion, a member of Shinano herbal medicine research institute, a member of Nippon medicinal herbal medicine, a member of Japanese herbal medicine history.

著書に『花かおる御嶽山』(ほおずき書籍)、『木曽の昭和史』(郷土出版社 共著)などがある。
平成24年9月長野県製薬株式会社復帰(製販部品質保証部)、平成25年4月公益財団法人東京生薬協会「国内薬用植物栽培事業委員会」委員として全国における薬用植物栽培普及に尽力。

国内産薬草栽培の展望

私の子どもの頃、農地・林地は何にも代えがたい資産として皆が認識し取り扱ってきた。その時の価値観が今でも体に染みこんでいます。

しかるに、今日までの農業施策の結果として農業従事者の高齢化、離農・遊休放棄地の拡大、農薬の多品種頻回使用等々、どのような側面から俯瞰しても適切な業態環境とは言えない状態に陥ってしまいました。
人々が希望をもって農業を営めるには、国策の大転換レベルのリセットが必要と考えています。しかし、国はその方向を向いているとは思えない。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は業態にさらなる負荷をかける危険性さえ感じます。

国際標準化的な考え方には違和感があります。
日本には伝統的な風土・文化に即した生活様式があります。
農業にしても健康にしても、土地を含めた自然環境が適切な方法を決定してくれます。
身土不二とか地産地消のような、今では影が薄くなった言葉がそれを教えています。

そうはいっても、残り少ない人生このまま指をくわえているわけにはいきません。
染みこんだ価値観を蘇らすべく、私のできる範囲で活動を展開しています。
農業の分野で、薬草栽培はまだ小さな位置づけしかもらっていませんが、国がそれに取り組もうとしている大きな情報をもっています。適切な活用をはかれば、安定した経済効果を生むと確信しています。

現代の生薬事情

現在、日本で生薬を原料として製造される医薬品には、医療用漢方製剤、一般用漢方製剤、生薬製剤(百草丸、龍角散、実母散他多数)、生薬(刻み粉末など)がある。

近年、野生資源の減少、需要の増加、人件費や栽培加工費の上昇、天候不順による減産などで価格や品質などが一定せず、原料生薬の供給は必ずしも安定しているとは言い難い。

日本漢方製剤協会では、中長期事業計画2007(5ヶ年計画)、また平成24年度を初年度とする「中長期事業計画2012」において、最優先課題として「原料生薬の品質確保と安定確保の推進」を掲げている。その事業の一環として「原料生薬使用量等調査報告書―平成20年度の使用量―」を23年7月に公表した。ちなみにこの調査報告書は、我が国において医薬品の製造に使用される原料生薬の使用量に関する初めての調査資料である。

この中で、特筆すべきは原料生薬の産出国のデータである。
平成20年度から22年度にかけての数値では、全生薬273品目の総量では中国産約80%、その他の国約7%、日本産2.5%で推移している。

主要品目のベスト10を数値化しても中国産が87.8%を占め、片や日本産は2.9%のみである。生薬を原料とする医薬品メーカーが、中国に依存してきた数値がここに見える。

このような状態に陥った原因の最大の要因は、中国産原料が安価ということに尽きる。大半の原料価格を精査すると、日本産に比べ1/2~1/3程度にとどまっている。

レアメタル事件をご記憶でしょうか?

―中国政府の輸出規制と日本の製造業への影響―と題して次のような論評があった。

「2010年7月、中国商務部は、レアアース輸出枠を従来の約3分の1に削減しました。
このため、原材料の大半を中国から輸入していた日本国内のレアメタル・レアアース関連業者は、調達と価格高騰に悩まされました。
日本国内のレアメタル・レアアース関連業者は、原材料不足、価格高騰、円高の三重苦に見舞われています。
いずれにせよ、産出が中国に偏っている事は、レアメタルの消費量が世界最大とも言われる日本にとって、大きなリスクを抱えている事になります。
中国政府がレアメタルを独占していることを盾に、ロシアのガス外交のような強引な手段に出る危険性は否定できません。

その為、日本の経済産業省は、非鉄金属の内で特に希少な31種類をレアメタルと定義し、中でも特に供給体制に不安が高い金属(ニッケル、クロム、タングステン、コバルト、モリブデン、マンガン、バナジウム)は国家備蓄制度を設けて、供給が途絶えないよう備えています。例えば、前出のタングステンやモリブデンは国内消費量の約3週間分、全金属の平均で約24日分の備蓄をしています(2007年末時点)。
そして国家備蓄だけでなく、民間企業の側でも(社)特殊金属備蓄協会」が主体となり、全国の約50カ所でレアメタルの備蓄を行っています。

独占的な資源を有する国家は、戦略資源として強硬策をとることを否定できません。

このような観点から、現状の生薬流通は極めてリスクの高い状況にある。

国内産生薬栽培推 進事業にも国が動いた

現在、厚生労働省、農林水産省、地方自治体の薬務担当部署、農業団体、日本漢方製剤協会が参加して、薬用植物の国内栽培の拡大に向けた取り組みが開始されている。
日本における生薬生産の拡大は、農業振興、生産地域の雇用の創成や経済の活性化を促すメリットが期待できる。
国民の健康を維持するうえで今や伝統薬である漢方製剤、生薬製剤及び生薬は不可欠のものであり、その原料である薬用植物の国内生産拡大は、特定の国に偏りすぎたカントリーリスクの回避に備える観点からも急務である。

このためさまざまな取り組みがなされている。

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